教師になれる大学への受験を考えていたのですが、教師は長時間労働の仕事だと知って、働いていけるか不安に思い始めています。教師に絶対なる、という強い意志が持てません。どうすれば強い意志を持てますか。

回答者 市原純さん(北大教育学研究院非常勤研究員)

  いま教師の中には、確かに長時間働いている人がたくさんいます。残業を減らす仕組みがなかったため、仕事量も労働時間もどんどん増え続けてきました。数年前から社会問題として注目され、学校現場では労働時間短縮に向けての試みを始めたものの、教師の仕事量を大幅に減らしたり、教師の数を大幅に増やしたりする動きは、まだ顕著に見られていません。
 あなたの迷いやゆらぎは、大切なものです。あなたが「まっとうな感性」(=人らしく働き、私生活も大切にして、いきいき暮らしたい、と感じるセンス)を持っていることを示しています。教師の姿は、子どもたちにとって、もっとも身近な大人の働き方の一例です。身近な大人が長時間労働で、自分や周囲の人を顧みない働き方をしていたら、そのそばにいる子どもたちにも、きっと負の影響が出るでしょう。だから、あなたのセンスは教師になったとき、とても重要なものとなるのです。
 教師の長時間労働を変えていくために、すでに声をあげ始めている先輩たちがいます。一方で、高校生時代から教師の働き方に疑問を感じ、それでも教師になるために大学に進学した現役大学生も知っています。その声を聴ける動画はインターネット上の動画共有サービス(YouTubeなど)で見ることができます。もしあなたが教師になったとしても、孤立してひとりで悩まなければならない状況ではなくなりつつあります。安心してください。
 では、どの大学を目指せばよいのか、受験勉強で自分はがんばれるのか、ゆらぎますよね…。あなたはとても大切なゆらぎに出会っているので、そのゆらぎを持ったまま、教師になれる大学への受験に挑戦してみてもよいんじゃないかな。あなたのような感性を持つ若い人たちを、教育の世界は求めているように感じています。あなたが精いっぱい、努力できますように。

 いちはら・じゅん 専門は教育制度論。1980年札幌市出身。

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