第6回新聞切り抜き作品コンテスト(北海道新聞社主催)の優秀賞受賞作20点が決まった。応募数に合わせて中学生が5点、高校生は15点。生徒は興味のある記事を切り抜いて台紙に貼り、意見を書き込んで完成させる。本年度はクマや人工知能(AI)、戦争と平和を取り上げた作品が多く寄せられた。

 応募数は前回比409点増の739点。初参加した札幌創成高と北見北斗高から、それぞれ200点以上の応募があり急増した。
 オホーツク管内小清水町の小清水中3年苅込青星(かりこみじょうせい)さんは「水産業 大ピンチ!」の作品で2年連続受賞。苅込さんを含め、特に高評価だった札幌市立中の島中3年の森梓紗(あずさ)さんの「熊と生きる」と、旭川東高1年菅原幸倫(ゆりん)さんの「78年前の戦争/78年後は平和?」、北見北斗高3年引地昴(ひきちすばる)さんの作品「Gift of Life 移植医療の今」の4点について、テーマ選びや紙面の工夫などを聞いた。

 4人以外の優秀賞受賞者は次の通り。(敬称略)

 【中学の部】彭由伊(市立札幌開成中等教育学校3年)樋口茉耶(札幌市立八軒東中2年)佐藤真以(石狩市立浜益中1年)
 【高校の部】菅原千宙(北見北斗高3年)米田悠陽(同)齊藤楓(同)吉岡奈央(同)本田まりあ(同)佐藤陽茉莉(同)近藤葵(同)土山結桜(札幌創成高2年)越田玲愛(同)樋口莉乃(札幌新川高2年)竹田陽菜(旭川南高3年)平間留奈(同)中村瑠愛(富良野高3年)


水産業の危機訴える

苅込青星さん=小清水中3年

 オホーツク管内で起きた海産物の大量死と禁輸などの国際問題をバランス良く取り上げ「水産業 大ピンチ!」と危機感を伝えた。
 宇宙開発をテーマに昨年も優秀賞を受賞したが、前回とは対照的に「地域が誇る産業の危機に衝撃を受け、身近な話題を選んだ」。地域面のレイアウトを参考に、地元にとってより興味深いニュースを優先するよう意識した。自宅のある小清水町は農業が盛ん。「今回の作品制作を通じて、近くのまちが強みにする水産業も詳しくなれた」と手応えを語る。
 掲載した記事のそばには直筆の解説文を添え、今後予想される影響やそこから得られる学びなど自身の気付きを伝えるよう心がけた。
 道新読者の母の影響で幼少期から新聞を読み始め、今では「唯一かつ最大の情報源」。宇宙飛行士になる夢をかなえるため、札幌市内の高校進学を目指す。「社会に関する知識や意見を持つことは、どんな仕事にも役立つ」と話している。(佐藤海晟)


クマと共存 知識提供

森梓紗さん=札幌市立中の島中3年

 委員会活動で図書局長を務めていた昨秋、図書室でクマをテーマとするイベントを開いた。入り口付近にクマ関連の本を展示。クイズを作り、親子グマの実寸大の足跡の紙を床に置いて大きさを知る工夫も凝らした。「目撃が増え、死亡事故も起きた。身近な問題として遭遇した時の知識を身につけ、共存の方策を考えてほしいと思いクマをテーマにした」。この準備と並行して夏休み中、クマ出没に焦点を当てた今回の切り抜き作品も手がけた。
 まず、図書室に春から残してあった北海道新聞に目を通し、クマの記事を切り抜いた。このうち6本を作品に掲載。「目撃723件 過去5年最多 1~5月」の記事は「一番注目してほしかったので、赤いテープで周りを囲って目立たせた」。1週間かけて仕上げたが、タイトルが決まらず、「最後の最後まで考え続けシンプルに『熊と生きる』にした」と振り返った。
 「受賞を聞いて驚いたけど、出来栄えは気に入っていて素直にうれしい」と笑顔を輝かせた。(福元久幸)


核兵器の脅威詳細に

菅原幸倫さん=旭川東高1年

 54センチ×114センチという横長の大きな作品。書き入れた文章も膨大な量となっている力作だ。
 作品のテーマは核兵器。関心を持ったきっかけは小学5年の時、家族で広島市の平和記念資料館を見て衝撃を受けたことだ。さらに中学3年の時、旭川市青少年平和大使に選ばれ、長崎原爆資料館を見学した。昨年夏休みに制作に取り組んだ。
 核兵器に関する六つの記事を貼り、詳細な文章を書き添えた。さらに広島、長崎の平和宣言骨子の表を貼り、自筆のカラーイラストを添え、分かりやすさと読みやすさを心がけた。作成に1週間かかったが「関心があることなので、苦労した感じはしなかった」と言う。
 貼った記事のうち、忘れられないのは、被爆直後の広島での新聞社のカメラマンの記事。本文を読み写真を見ることを繰り返し、カメラマンの心情を想像した。「核の脅威は過去のものではないと多くの人に知ってほしい」と話す。(小田島玲)


移植医療の研究紹介

引地昴さん=北見北斗高3年

 「Gift of Life」のタイトルに「移植医療に興味を持つ人が増えてほしい」との思いを込めた。米国で心臓病の男性にブタの心臓を移植する世界初の手術が行われたニュースが話題となり、移植医療に関心を持ち昨年8月に1週間で完成させた。
 臓器移植の歴史や現状、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を移植に活用する研究を紹介。まとめで「臓器提供者の不足が世界的な課題となっている。このような問題は技術だけが向上しても解決しない」と指摘し「私たち自身が積極的に関わり、考えなければ技術の普及につながらない」と書いた。
 北見市出身。道内で奮闘する小児脳神経外科医を描いたドキュメンタリー漫画「義男の空」を読み、医療に興味を抱いた。地域医療を支える医師を目指し道内の大学医学部への進学を考えている。
 朝起きて新聞に目を通すのが習慣。オホーツクに関する記事に注目することが多く「地元の同年代の人たちの頑張りが記事に載っていると、刺激になる」と笑顔を見せる。(鈴木理詞)