Q コロナ禍の世の中のせいか、最近、子どもの元気がなくなっている気がします。本人は「大丈夫だ」と言います。家族も気にしすぎだと言います。私の杞憂(きゆう)なのでしょうか。どのように接したらいいでしょうか。
回答者 大谷和大さん(北海道大学大学院教育学研究院講師)
A 新型コロナウイルス感染症の影響による急激な環境の変化やギスギスした、しかも先行きが見通せない世の中の雰囲気に、誰しもいろいろなストレスを抱えています。思春期のお子さんはこのような環境の変化には特に敏感なため、精神的に不安定になることは十分に考えられます。
お子さんの元気のなさを心配するのは、親としてごく自然なことだと思います。私は子どものやる気やその反対のやる気の出なさ(抑うつ気分)について研究しているのですが、親御さんに子どもの状態を尋ねると、多くの場合、主に回答者はお母さんですが、子どものことをある程度正確に認識されており、お子さん自身の回答傾向とおおむね重なります。が、完全には一致しません。なぜならば、親がわが子へ向けるまなざしには、子どもに対する期待や不安なども混在するからです。私も2児の親でよく分かります。
実は子どもは、親から自分に向けられた視線を感じることに天賦の才を発揮します。おそらくは親がそう思う以上に、そうした期待や不安を敏感に感じ取ってしまうのだと思います。結果として、本人が意図してかどうかは不明ですが、親が思う通りの状態になってしまうことがあります。子どもに対して悪い方、たとえば、元気がないと親が思い込んでいると本当に子どもがそうなってしまう恐れもあるのです。
お子さんの状態を適切に把握し、本当に元気がなければ医療やカウンセリングにつなげることはもちろんですが、お母さん自身が過度にお子さんのことを悪い方に捉え過ぎないことも重要だといえます。過干渉に気を付けながら自然なコミュニケーションを心掛けてはいかがでしょう。世の中が落ち着き、子どもたちが生き生きと過ごせる日が一日でも早く訪れることを願っています。
おおたに・かずひろ 教育心理学。1984年奈良県出身。
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