Q だんだんと成績が下がってきていて「内申点が取れないと進学できない」と言われ、部活をやめさせられそうです。これではまるで内申点の奴隷です。やりたいことが制限されてしまう教育は本当に教育と言えるのでしょうか。
回答者 岡田智さん
(北大大学院教育学研究院付属子ども発達臨床研究センター准教授)
A 教育って何なんだろう。私も中学生の頃、あなたと同じような疑問を持ちました。私はその頃、協調性がなく言うことを聞かなかったので、よくしかられていました。親も先生方も私の素行の悪さを目の前にし、私の将来や学校生活のことを心配して「そんなのじゃ、ろくな大人にならない」と言ったのでしょう。事情や時代こそ違いますが、気持ちは同じですね。
教育は「個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし、自主及び自律の精神を養う」ことであると国は言っています。あなたの部活を続けたいという気持ちは自主的精神のある、非常に価値のあるものです。一方で「内申点が取れない」「行く学校がなくなってしまう」といったマイナスの気持ちから起きる行動は主体的でありませんし、持続する意欲も起きなくなります。
先生や保護者の立場としては、今後のあなたの不利益を懸念し(受験を失敗してしまうかも、という気持ち)、部活を制限しようとしたのかもしれませんね。そうはいっても、あなたは自分の選択に対して自分で責任を持ち、自分で決定するという権利も持っています。もう一度、先生や保護者の方と話し合ってみてはどうでしょうか。
どのような結果であれ、自分で選んだことは自分の責任であると受け入れていくことが問われます。覚悟をもって、先生や保護者に気持ちを伝えてみましょう。折り合うところが見つかるかもしれません。また、あなたの気持ちも理解してくれるかもしれません。
内申点に縛られてしまう教育の課題は、私もひしひしと感じています。あなたの疑問から、われわれ大人の取り組むべき大事な課題が垣間見えました。子どもたちが周りから縛られ、促されて動かされるのではなく、自身の生活や価値、将来を内発的に感じ、主体的に動いていくことができるような教育とは何だろうか。われわれ大人に課されています。
質問は過去の相談事例や投稿を基に再構成しています。