境界知能の方について「人の心の痛みとかわかんないです」といったインタビュー記事を見ました。境界知能と診断された私のきょうだいは、いじめられている友達をみると、かばったり、困っている人を見ると心配したりします。よっぽど、いじめをするIQの高そうな人の方が共感できない人に思えます。IQで人の価値を決めてしまう風潮に憤りを感じます。

回答者 岡田智(北海道大学大学院教育学研究院付属子ども発達臨床研究センター准教授)

  あなたが感じた違和感は、とても大切な感覚だと思います。実際、心理学の研究でも、知的能力と共感性はそれほど強く関連しないことがわかっています。
 ただ「共感」には、相手の考えや感情を推測する力(認知的共感)と、相手の感情や痛みを同じように感じ取る力(情動的共感)の二つがあり、知的能力(IQ)は、前者の「考えて理解する力である認知的共感」とある程度関連があるようです。
 この認知的共感に苦手さがある人は、相手の意図や悪意を理解できないことがあるので、利用されやすかったり、だまされやすかったりします。一方で認知的共感力を、相手をだましたり、傷つけたりすることに使ってしまう人もいます。
 しかし、後者の「感じ取るタイプの情動的共感」は、IQとほとんど関係しないことが多くの研究でもわかっています。だから、境界知能の人だって、高IQの人だって、あなたのきょうだいのように、いじめられている友達をかばったり、困っている人を心配したりできる人はたくさんいます。IQの高低にかかわらず、情動的共感力がない人もたくさんいます。
 社会では、ときどき「高IQや高学歴の人ほど価値がある」という空気がありますが、人の価値はIQや偏差値では決まりません。誰かを思いやれること、困っている人に寄り添えること、人を大切にできることは、いろいろな人がいる社会の中で生きていくためにとても大切な力です。
 このような力は周りの人にとっても、自分にとっても幸せで豊かな人生を送るために必要なものと考えられています。きょうだいのことを大切に思っているあなたや、あなたのきょうだいが持っている思いやりの心は、とても価値があることだと思います。

 小中高生や大学生、保護者の悩みと、解決に向けた考え方を過去の相談事例などをもとに紹介します。