息子と政治の話題で意見がかみ合わず、口論になりました。息子は、私の意見はネットでみる意見と全く違っていて信用できないと言います。それどころか、私が反論すればするほど疑わしく思えるとまで言います。せっかく政治の話もできるようになったと思ったのに、どうしたら持っている情報や意見が違う者同士で分かり合うことができるでしょうか。

回答者 加藤弘通さん(北海道大学大学院教育学研究院准教授)

  若者の政治離れが言われるようになって久しい中、お子さんが政治に対して意見を持っているのは貴重なことですね。その一方で保護者としては、その意見がネットの影響を受けた偏ったものなのではないかと心配されているのではないかと思います。
 さて、ご質問の件です。あなたが言う「分かり合う」というのは、何を分かり合いたいのでしょうか。少し強い言い方になりますが、あなたが分かり合いたいというのは、息子さんにあなたと同じ意見を持ってもらいたいということでしょうか。しかし、それは「分からせる」ことであったとしても「分かり合う」ということとは少し違うように思います。
 「分かり合う」ために大事なことは、たとえ違った意見であっても、なぜそのような意見をもつに至ったのか、その背景やプロセスを互いに丁寧に知り合うことです。
 恐らくネット上にもいろんな考えがあり、むしろ意見を一つだけに絞るのは簡単ではないはずです。どうしてあなたの息子さんは、あなたとかみ合わない意見を受け入れようと思ったのでしょうか。あなたの息子さんは、一つだけの意見に最初から飛びついたのでしょうか。それともいろんな意見を知った上で、その意見を選んでいるのでしょうか。
 「分かり合う」というのは結論を共有することではなく、プロセスを共有することでもあります。いろんな思いがあって、今、その意見に到達している。それは保護者の方も同じでしょう。そのプロセスに思いをはせつつ、どのように考えて、その意見をもつに至ったのか、それに耳を傾けてみることからはじめてみませんか。それが息子さんをひとりの個人として認めることにもなるのではないかと思います。

 質問は過去の相談事例や投稿を基に再構成しています。