1歳7カ月になる息子がまだ言葉を話しません。周りの子より遅いように感じるのですが、何か親にできることはありますか?

回答者 川田学さん
(北海道大学大学院教育学研究院付属子ども発達臨床研究センター准教授)

  言葉の発達は1、2歳頃の子どもを持つ保護者からの相談で特に多いものの一つです。言語発達は個人差が大きいものです。
 生後10カ月で話し始める子もいれば、2歳以降になってからの子もいます。最初の言葉は早かったけれど、語彙(ごい)はゆっくり増えたという場合もあれば、話し始めはゆっくりだったけれど、出始めたらあっという間におしゃべりにという場合もあります。
 単に「早い」「遅い」だけでなく、発達には個性的な道のりがあり、「その子らしさ」を形づくる大切なプロセスです。
 次に、言葉の発達を広い視野でとらえることも必要です。親はわが子の成長を願う気持ちが強いので、どうしても「言葉を発したかどうか」(発語)が気になってしまいます。しかし、発語の土台となる育ちにも目を向けたいと思います。
 一つは言葉の理解です。お子さんに「ポイして」と紙くずを渡したらゴミ箱に入れてくれる。「手を洗ったらおやつにしようね」と言ったら、トコトコ歩いて洗面所に行く。これらは純粋に言葉だけの理解というより、状況や習慣の理解を含んでいますが、言葉はこうした生活の流れと共に覚えていきます。
 一方で、絵本を読みながら「くまさんどこ?」など、問いかけるようなコミュニケーションも大切です(質問攻めにはならないように)。こうした場面では、子どもは生活習慣というよりも、言葉を「語彙」として理解することにつながるでしょう。
 ボールの転がし合い、カーテンのかげに隠れてのいないいないばあ、追いかけっこ、お散歩で子どもが石ころを拾い、それを親に見せてくれること。こうした「やりとり」には、順番交代や他者と何かを共有しようとする意図があり、どれも言語発達と深いつながりのある姿です。
 大人が子どもに先回りしすぎると、子ども自身が気づいたり困ったりして、それを伝えようとするきっかけを失ってしまうこともあります。赤ちゃんの時よりも、子ども自身が何かをやろうとする姿を見守り、待つ姿勢も、言葉の表出を支える大人の役割だと思います。

 質問は過去の相談事例や投稿を基に再構成しています。