Q 僕は成績は特に良くなく、スポーツや音楽など得意な事もありません。自分の将来もどうしてよいか分からず、不安です。親に相談すると「もっと自分に自信を持ちなさい」と言われ、自信が持てない自分がダメな人間のように思えてさらに落ち込みます。
A お便り、ありがとう。私も高校生の頃、あなたと同じように「フツー」であることに悩んだ時期があるので、よく分かる気がします。でも今、心理学者になってあなたの悩みや当時の事を振り返ると、こういうことに悩めるようになったこともとても大切な、大きな成長だったんだなと思います。
どういうことかというと、自分に対する自信というのは、心理学では自尊心と言い、あなたに限らず、思春期にすごく下がります。なぜ下がるかというと、思春期には思考が大きくモードチェンジして、深く物事を考えられるようになるからです。
具体的には自分が「考えている事を考えられる」ようになります。これは筋立てて、物事を考えられることを意味している一方、「悩むことに悩む」力にもなり、悩みを深める力にもなります。「親にイライラしている自分にイライラする」とか「こんな事に悩んでいる自分がイヤになる」なんてこと、よくありませんか。あなたが最後に言っている「自信が持てない自分がダメな人間のように思えて」ということも「自信が持てない自分に自信が持てない」ってことですよね。これは思春期の大切な力がきちんと身についている証しでもあります。
だから思春期に自分に自信が持てないと思ったら、それは「今、自分の頭がバージョンアップしているんだ」と考えてほしいなと思います。(加藤弘通)
かとう・ひろみち 北大大学院教育学研究院付属子ども発達臨床研究センター准教授。臨床心理士。専門は発達心理学。1973年香川県出身。
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