北海道NIE推進協議会は2025年度の「実践表彰校」に、胆振管内安平町立早来学園、北海道教育大学付属旭川中、旭川志峯高の3校を選んだ。日本新聞協会から無償提供された新聞を授業や朝学習で活用する道内の実践指定校は32校。工夫を凝らした新聞活用に取り組んだ3校の実践を紹介する。実践内容は協議会が発行した25年度の実践報告書に収録されており、8月に札幌で開く第10回北海道セミナーでも紹介される。(五十嵐文弥、福元久幸)

*被災者の思い 報道通じ考察*早来学園 片岡鉄也教諭

 教室で学ぶことには、新聞で報道されることが少なくない。そこで「新聞を活用した主体的な学習」「新聞に関心をもつ国語学習」「報道から振り返る震災学習」について報告する。

 新聞を活用した主体的な学習は新聞社のワークシートを使って週1回、自主学習教材として実施。ワークシート3枚をプリントにまとめて配布し、取り組ませた。児童たちは教室で学ぶ世の中の出来事と実際の出来事をつなぐことができ、「教科書で勉強した政治のことが記事になっていて内容がよく分かった」などの感想を語っていた。

 新聞に関心をもつ国語学習では、4年生国語「新聞を作ろう」の単元で新聞を読み、紙面には新聞名や発行日、見出し、写真、図表などがあることを学んだ。その上で記事の見せ方や知らせたいことを分かりやすく伝える工夫などについて考えた。続いて実際に新聞を作成。一番知らせたい記事が目立つところに割り付けられることを知り、何が注目の出来事か紙面から読み取れるようになった。

 9年生(中3)は、東日本大震災で被害を受けた宮城県と岩手県への修学旅行を隔年で実施し震災学習を行う。2026年4月、岩手県を訪問するにあたり、新聞を活用した震災の事前学習に取り組んだ。初めに震災当時の新聞を掲示して津波などの被害を学習。釜石市鵜住居(うのすまい)地区の小中学生らが避難した経路を地図で確認し、当時の中学生の考えを想像した。また、避難する小中学生の写真を提示して小中学生や様子を見ている大人たちが何を思い、何を話したかを想像し吹き出しに記入した。

 一方、宮古市田老地区には町全体を囲む高さ10メートルの防潮堤があったが、181人の死者・行方不明者を出した。なぜ多くの人が犠牲になったのかを「避難しなくても安全と回答した人が12%いた」という住民アンケートの記事から考えた。

 生徒たちは自分の頭で考えることが、もしもの時に自分や他者の命を守ることになることを理解し「災害をなくすことはできないけれど、被害を小さくすることができること」を学んだ。実際に訪れた田老地区・鵜住居地区では、甚大な震災被害の大変さを頭ではなく肌身で実感していた。

 今後は「震災学習の学びと各教科の防災学習の学びを結び、9年間の義務教育の中で児童生徒が防災を学べるカリキュラムが必要だ」と考えている。

宮古市田老地区の防潮堤を訪れ甚大な震災被害について学んだ生徒たち


*社会事象 記事読み背景理解*道教大付属旭川中 吉田雅風(まさかぜ)教諭

 担当した1年生約100人を対象にアンケートを行ったところ、社会事象を理解する力は一定程度身についているものの、事象を背景や社会構造と結びつけて捉える力が不十分と分かり、新聞の活用に取り組んだ。

 まず校内の掲示板を使い毎月「環境問題」「スポーツ」などのテーマに沿った新聞記事を掲示した。背景や社会構造に目を向ける手がかりになるよう教師のメモも掲示した。

 社会科では、授業の導入場面で学習内容と関連の深い記事を提示し、授業の中では課題解決や考察に有効な複数の記事を活用した。さらに英字新聞も用いて、同じ社会事象を国内外の視点から比較することも行った。レアメタルの記事を読み「アフリカの問題は遠い国のことではなく、日本の便利な生活を支えている地域だと感じた」とワークシートに記した生徒もいた。

 1年生はまた、前年度に続き道北小中学生新聞スクラップコンクールに参加した。生徒が関心を持った社会事象をテーマに記事を選び、自身の問いや考察を加えたスクラップを作り上げた。テーマ設定から記事の選定や考察まで生徒に委ねたことで、主体的に取り組む姿が見られた。

 扱われたテーマは国際平和から猛暑の危険、いじめ問題など国際から環境、人権などさまざま。完成した作品はクラスで共有し、互いのテーマや考察を紹介し合う交流活動を行うと、自分にはない視点や問いに気づき、多面的な捉え方の重要性を実感していた。コンクールでは最優秀賞を受けるなど高い評価を得ることが出来た。

 NIE授業の後に行った調査では「事象を多面的・多角的に捉えようと意識できている」と答えた生徒が事前調査の65%から91%に増加。「社会的事象の背景に着目した理解ができている」との回答は40%から76%に増えた。新聞を使った継続的な学びが、生徒の社会的事象への理解を深化させるのに効果があったことが裏付けられたと思う。

 新聞の読み取りに難しさを感じた生徒もいたことから、今後は記事の要点を絞ったり、補足資料を用いたりして理解を助ける工夫をしたい。掲示板や新聞スクラップの取り組みは、教科内だけでなく学校全体で共有できるように検討していく。

 新聞を社会科の授業に使うのは、間違いなく有効だと感じている。

教師の短いコメントとともに掲示板に貼り出された新聞


*ノート作り 考えを小論文に*旭川志峯高 井上陽介校長

 本校は2025年度、開校127周年を迎えた私立高で、前身は旭川大高である。旭川大の市立化に伴い法人分離し、23年に再出発した。コースを再設定し、国公立大や難関私大を目指す生徒が増えつつある。進路指導を充実させる中で、新聞を活用した取り組みを進めている。

 3年生が取り組む「新聞ノート」は、21年から始めた。見開きの左ページに記事を貼り、右面には文中の知らない用語を調べた内容と、自身の意見を小論文形式で記載する。記事を選んでノートに記入するのは、放課後の時間や家で行う。

 生徒は週に数回、朝にノートを提出。その日のうちに教師が内容を確認し、添削したノートを返してアドバイスを行った。

 指導を続けることで、長文が苦手であった生徒は徐々に読むことに慣れ、小論文の題意や示された文章を理解できるようになった。表現や漢字は、間違いの指摘を繰り返すことで適切に使えるようになった。新聞を継続して読み、社会的事実を知ることで主張の根拠や理由の説得力が増し、自信を持って小論文を書けるようになってきたと感じている。

 また、生徒は自分の目指す業界の課題を把握することになり、学びの意欲が向上。過去には紙面で知ったイベントに参加するなど、目指す業界をさらに知る契機となった例もあった。

 25年度はこれに加え、図書室の機能を備えつつ昼休みや放課後の勉強にも使える教室「ラーニングコモンズ」を新設して、ここに新聞を置いた。教室前にはNIE実践指定校であることや、何月にどんな新聞が読めるかなども掲示し、入試対策への新聞活用を呼びかけた。

 この年、新聞ノートに取り組んだ生徒は志望の工学に関する記事を学んだ。集団討論(グループディスカッション)に向けた対策として、鮮度の高い新聞の情報を活用した練習を行い、目標大学に合格することができた。

 多様な方法で受験生を選抜する「総合型選抜」に対応するため、今後も新聞記事を使った集団討論練習に取り組んでいきたい。学ぶ意欲の向上や目標づくりのためにも、より早い学年からの実践も検討していきたい。

 新聞を使った学びを学校全体の指導に広げ、進路指導に加えて、探究の活動でも活用していきたいと考えている。

小論文や面接対策に新聞を活用しようと呼びかける「ラーニングコモンズ」前の掲示