Q ADHDと診断されました。友達とのトラブルが多いので、親は、先生やクラスの人たちに僕がADHDだとカミングアウトしようとしています。これ以上、まわりから嫌なことを言われるのは嫌なので、やめてほしいです。
回答者 岡田智さん
(北海道大学大学院教育学研究院付属子ども発達臨床研究センター准教授)
A 注意集中や自分にブレーキをかけることが苦手で、そのせいでうまくいっておらず、支援が必要な状態をADHDと言います。最近は発達障害の概念も世の中で認識されるようになりました。診断ラベルが貼られると、本人だけでなく周りの人はその苦手さに対して大まかな理解が得られやすくなります。支援も得やすくなります。
しかし、25年間カウンセラーとしてやってきた私の経験でも、学校の先生に診断名を伝えた人は多くいましたが、30%ぐらいの人は診断名を学校には伝えていなかったと思います。ADHDの診断を受けた人の中で、クラスメートにまでカミングアウトした人はほんのごくわずか、5%もいなかったです。
なぜこのようにカミングアウトが少ないかというと、あなたが心配しているように、診断ラベルにより、差別や決めつけが起きてしまったり、勝手に悪いうわさが流れていったりすることがあるからです。診断名を周りにカミングアウトするかどうかは、主治医と親と、あなたの気持ちをわかってくれそうなら学校の先生と相談していくとよいでしょう。あなたが思っている心配は、誰もが感じる、ごく普通で当然のことです。
そして、診断名のカミングアウトをする際の意義とリスク(危険性や問題点)は、医師などの専門家はよく知っています。しかし、保護者はあなたのしんどい状況に心を痛めており、周りの人たちにあなたの苦手さを理解してもらいたいと、必死になっているかもしれません。保護者の気持ちもよくわかるのですが、でも、一番大切なのはあなたの気持ちです。
学校であなたが経験しているつらい状況やあなたの気持ちは、大人には見えづらいものなので、自分で表現しないと理解してもらえません。なので、主治医の先生と保護者に、正直にあなたの心配を伝えてみましょう。うまく伝わらなさそうな予感がする場合は、スクールカウンセラーに相談してみてもよいでしょう。
質問は過去の相談事例や投稿を基に再構成しています。