僕には吃音(きつおん)障害があります。負けたくないので、生徒会役員として時には全校生徒相手のスピーチもしています。さすがに先生方が見ている場面で「花壇」と言おうとして「カカカカ、カダン」となっても笑われはしません。ただ廊下で下級生にからかわれたり、バカにされることがあり落ち込みます。吃音にどう向き合えばよいでしょうか。

回答者 二通諭さん(札幌大谷大学社会学部特任教授)

  吃音とは、言葉の一部を繰り返す、音を引き伸ばす、言葉が出ないという三つの症状のことを指しますが、文面では、少なくとも言葉の一部を繰り返す症状があるわけですね。
 あなたには、障害に負けたくないとの思いから、大勢の前でスピーチをする心の強さがあり、克服の方法を自ら編み出しています。2001年に世界保健機関(WHO)で採択された国際生活機能分類でも、本人の前向きな活動が、社会参加や心身の改善につながるとの考え方が示されています。まさにあなたが取り組んできたことです。
 からかう人も長い目で見れば変化していきますが、中学生という時点では、人を思いやる心の働き、人の気持ちを想像する力、自身の行動をコントロールする力などに課題があります。したがって、あなたぐらいの知性と精神力があるなら、からかわれることは避けられない、とあらかじめ考えておくのも一つの手です。からかわれた場合「ああ、来たな」と、心の中で笑って受けとめるのです。
 吃音障害を抱え、大勢の前でスピーチするあなたを、多くの人は勇気のある人と高く評価しています。疾病や障害、少数者としての疎外感、何らかの劣等意識を抱える人は、あなたの姿に励まされています。
 さて日々の心掛けとして提案です。苦しむ側から、苦しむ人を支える側に回ろうと試みてください。簡単ではないですが、それができれば周囲の人たちは、吃音の状態はどうあれ、あなたの話を聞きたいと思うでしょう。もちろんあなた自身も、困った時は周囲に助けを求めてください。

 につう・さとし 1951年札幌市生まれ。長く小中学校で障害児教育を担当。北海道子どもセンター運営委員。札幌学院大名誉教授

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