最近、周りの子たちの言葉がきつくなってきて、それが嫌です。「きもい」「死ね」「生きてる価値なし」など当たり前に使っている子がいます。聞いているだけで、悲しくなります。注意をすると、「冗談のわからないやつ」と言い返されます。

回答者 加藤弘通さん
(北海道大学大学院教育学研究院付属子ども発達臨床研究センター准教授)

  今は、少し苦しい時期だと思います。というのも、小学校も高学年に入ってくると、多くの子たちが大きく変化していくからです。それは背が伸びたり、大人っぽくなったり、身体のこともありますが、気持ちや考え方といった心のことでもあります。変化するというのは、本人からすると成長でもありますが、周りにしてみると変わってしまったと思え、少し寂しい、時に嫌だなという気持ちにもなります。
 この時期の心にどんな変化が起きるのかというと、それまでよりも相手の気持ちを深く考えられるようになります。それはやさしくなれる一方で、逆にどんな言葉が相手の心により刺さるのかも考えられるようになることを意味しています。だから、きつい言葉づかいも増えるようになります。それからもう一つ、抽象的なことを考えられるようになります。たとえば「生きている価値」など、すごく答えるのが難しいですし、答えが一つに決まるようなものでもありません。「きもい」もどんな状態にも当てはめられ、逆にいうとどんな状態が「きもい」のかはっきりしていないという意味で抽象的です。恐らく本人もよく分かっていない、もっというと分かるつもりもないまま、使っていると思います。でも言われたほうからすると、何が答えなのか分からないのできついですよね。
 では、何ができるのか。一つは「なんか難しい言葉を使っているけど、その意味、よく分からないまま使っているんじゃないか?」と一歩、外から眺める方法です。もう一つは「その言われ方はきつい」ときちんと言うことです。相手の気持ちを考えられることと、相手の気持ちが分かることは必ずしも同じことではないですから、自分の気持ちをきちんと伝えることは大事です。逆にいうと「その言われ方はうれしい」と伝えることも大事です。それによって良いところでの関わりが増えるといいなと思います。

 質問は過去の相談事例や投稿を基に再構成しています。