新型コロナウイルス対策で、子どもを預けている保育園でも保育士さんがみんなマスクをしているのですが、表情がよく見えないと小さい子の成長に影響はないのでしょうか。

回答者 川田学さん
(北海道大学大学院教育学研究院付属子ども発達臨床研究センター准教授)

  感染症の問題が長期化する中だからこそ、子どもの経験・発達の観点をしっかり意識した生活を考えたいですよね。お子さんの園の保育士さんは、保育時間中ずっとマスクをつけたままなのでしょうか? まず、そこを確認するとよいでしょう。
 大人の表情がよく見えないと、乳幼児に負の影響があることについては、保育士の多くは認識していると思います。そこで、口の動きを見せることが大切な0~1歳の食事や、もっと大きい子も含めて絵本の読み聞かせでは透明のマウスシールドを使ったり、外遊びの際は保育士もマスクを外したりするなど、感染予防と子どもの経験・発達のバランスをとる工夫をしている園が多いのではないかと思います。こうした工夫をされている園ならば、安心してよいと思います。
 大人のマスク着用は、乳幼児には表情が分かりにくく、言葉も理解しにくいです。特に、言語や表情理解の発達が重要な3歳未満では、目元の表情だけでは学習が困難です。小さい子は、耳から入る音声と、目で見える相手の口の動きを統合して、言葉を理解し、発音を学習します。そのため、特に3歳未満の保育では、できるだけ透明マウスシールド等を利用して、口元も見えるようにすることが大切です。こうした保育園等での対策には、社会の理解も不可欠です。
 また、子どものマスク着用については、日本小児科医師会から2歳未満は基本的に着用をひかえるべきだとの指針が出ています。窒息等の恐れが大きいためです。世界保健機関(WHO)は5歳未満ではマスクを適切に扱えず、効果が期待できないとしています。マスクを長時間している子どもに頭痛や意欲の減退などさまざまな心身症状が出ているとの研究報告もあり、特に就学前児のマスク着用には慎重であるべきだというのが、専門家の見解です。
 新型コロナ2年目と長引く中で、子どもの経験と発達の視点から対策を見直すべき時期だと思います。大事な気づきをありがとうございました。

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