新型コロナウイルスのせいで休校になったり、外出の自粛が続いたりして、これまで普通だった生活が全然できなくなりました。学校は再開したけれど元通りではないし、これからも「普通じゃない生活」が続くのかなと思うと、気持ちが落ち着きません。

回答者 宋美蘭さん(北大教育学研究院専門研究員)

  新型コロナの国内初の感染者が出てからまもなく半年になります。「緊急事態宣言」が解除されたとはいえ油断できない毎日ですよね。これまでの当たり前の「日常」が一変し、当たり前じゃない「非日常」が今や「日常」になっています。知らずしらず、日々の生活にイライラしたり、心の底のネガティブな感情や瞬間的な心の動きに自分自身も驚き、情緒不安になることがしばしばあるかと思います。私もそうです。
 こうした不透明な状況では無理に前に進もうとするより、むしろ一度立ち止まって視点を変えてみることも、<非日常の日常>を送る術(すべ)かもしれませんね。
 韓国の学校教育制度に、「自由学期制度」があります。2016年度に全国の中学生を対象に導入されました。子どもたちは1学期(6カ月)の間、学校を離れ、自ら学びを探求し自らの考えを探索します。いわゆる「自己主導型学習」で、子ども自らが学びを紡ぎだしていく方法です。子どもたちは試行錯誤をしながら、主体的に学びを創造するプロセスを学び、多様な活動を展開していきます。
 例えばAさんは、それまでの生活でおろそかにしていた「自分」を振り返り「弱い自分」「強い自分」「できる自分」といったさまざまな自分と向き合う<自分砕き>と<自分探し>の旅をし、一つの冊子にまとめたそうです。Aさんは、ゆっくりとした自分自身との出会いを通し、今まで味わえなかった自分への「共感」が生まれたそうです。
 新型コロナ感染症によって私たちの日常は一変してしまいました。しかし少し視点を変えて、この時期に自分なりの<自由学期制度>が与えられたと思ってみませんか。もちろん一つの例にすぎませんが、これまでとは異なる楽しさを探求し、発見することで、今の<非日常の日常=With コロナ>を、少しは落ち着いて過ごすことができるのではないでしょうか。

 ソン・ミラン 専門は教育学(比較教育)。1971年韓国・釜山出身。

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