Q 中学3年生の娘をもつ母親です。娘がとても楽しみにしていた修学旅行が新型コロナウイルスの影響で延期されてしまいました。娘は「延期だけでなく、もしかしたら中止になるかもしれない」と、とても落ち込んでいます。母親としても、何とか修学旅行を経験させたいと願っており、どう考えてよいのか困っています。
回答者 近藤健一郎さん(北海道大学教育学部教授)
A お嬢さまに修学旅行を経験させたいとのこと、多くの方もそう願うことでしょう。ご質問をいただいた時よりも日々事態が良くない方向へ変化していますから、ご心配は修学旅行にとどまらなくなっているかもしれず、胸が痛みます。
修学旅行は、1880年代半ばに東京師範学校が徒歩での長距離旅行を実施したのが始まり。その後、日本の多くの学校に広がりました。今では運動会などと並んで学校教育に欠かせない行事となっています。
日本修学旅行協会による2018年度調査によれば、日本全国の多くの中学校が、歴史学習や芸術鑑賞・体験などの学習活動と関連づけた修学旅行を実施しました。修学旅行は、学習指導要領の特別活動にも記されているように、各教科などとともに学校教育のカリキュラムに位置づけられています。楽しい思い出にとどまらず、普段できない体験を通じて学習活動を充実させたり、集団生活を経験したりする教育活動です。
休校措置が続く現在、学習の遅れが不安視され、家庭での宿題やオンライン授業などの取り組みがなされています。一方で、それらでは補えないものも多々あると思われます。修学旅行での経験と学びは、その一つだと私は思います。
20年度の学習期間が実質的に短くなっていくなかで、学校の教育活動をどうするか、子どもたちの心身への配慮とともに、学校も教育委員会等も考えています。その際、子どもたちや保護者の意向も重要です。
可能であればお嬢さまの意向をくみとりながら、学校と情報交換をされてはいかがでしょうか。先生方がとても大変ですが、正解のない対応をしなければならない今、誰かを責めるのではなく、多くの知恵と力を合わせる姿を、子どもたちに見せられたらと思います。それを見ることは、この先どんな状況になっても、いつかきっとお嬢さまの心を励ますことと思います。
質問は過去の相談事例や投稿を基に再構成しています。