6年生になってから、やらなければならないことが増えて、とても忙しくなってきました。先生は「一度に複数のことを行う『マルチタスク』に挑戦しては」と言うのですが、ぼくはそうしたことが苦手で、いつも何かが抜けてしまいます。どうすればいいのでしょうか。

回答者 太田一徹さん(北海道子どもセンター研究員)

  あなたの悩み、良く分かります。ぼくも子どもの頃から、一つのことをやりはじめると、ほかのことが目に入らず考えられなくなっていましたから。
 6年生になるとクラブや委員会では活動の中心になり、学校行事では最高学年として全校の皆をリードすることが求められますよね。そして卒業制作、文集・アルバム作り、下級生との交流活動など卒業に向けた取り組みもめじろ押しとなってきます。
 そうした中で先生は、早く仕事を終えることができる方法としてマルチタスクを勧めたのでしょう。
 マルチタスクとは「二つ以上の作業を同時に行う」こと、または「短時間で切り替えながら進める」こと。元々はコンピューター用語で、同時に複数の処理を実行することのようです。
 でも人間はコンピューターではありません。一度に多くのことをすると何かが抜けてしまうのは当然です。特に子ども時代には、いろいろなことに興味を持つとともに、一つの物事に熱中して取り組むことに意味があるのだと思います。
 確かにこれができるようになると便利かもしれません。「マルチタスクをする人が優秀」というイメージがありますが、人は実際には一つのことに集中して作業するようにできています。人の脳はマルチタスクに向いておらず、疲労やストレスにつながる恐れもあるそうです。
 きっとあなたは「これがおもしろい」「これはどうなっているんだ」と思うと、他のことが目に入りにくくなるのではありませんか。それはある意味で子どもらしい、人間らしいことだと思います。
 6年生のこの時期、先生と相談して、何が大切かを皆で話し合い、取り組むことを絞ってみてはどうですか。一つ一つをしっかりやり切ること、その中で楽しみながら友だちとつながることが、意味ある6年生の生活をつくると思います。

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