学校の先生から「動画ばかり見ていないで本を読むように」と言われます。読書は本当に必要ですか?

回答者 関あゆみさん(北海道大学大学院教育学研究院教授)

  知識を得るためであれば動画は具体的で分かりやすく、良い方法だと思います。私の知っている子にも本は読まないけれど、大人顔負けの物知りな小学生がいます。
 また、本を読むと心が豊かになるかどうかも分かりません。映画、ドラマ、アニメ、音楽、自然との触れ合いなど、心を豊かにするために役立つものはいろいろあると思います。
 それでも私は、子どもたちに本を読むことをお勧めしています。その理由の一つは、本を読むことは新しい言葉を学ぶための良い方法だからです。
 日本で行われた縦断調査(同じ子どもを数年にわたり調べる調査)でも、小3から小6、小6から中3、中3から高3のどの年代であっても、読書時間の長い人ほど3年後の語彙(ごい)力(知っている言葉の量)の伸びが大きいことが報告されています。
 「言葉なんて会話からでも学べるよ」「ゲームやアニメの難しい言葉も知っているよ」と思うかもしれません。でも、普段の会話で使っている言葉は限られています。物語になら出てきそうな「星がまたたく」とか「色とりどり」といった言葉は、日常生活ではあまり使いませんよね。
 また、確かにゲームやアニメには「攻略(こうりゃく)」「刃(やいば)」など、難しい言葉も出てきますが、出てくる言葉がかたよっていることが多いものです。
 言葉を学ぶことは「『ふいに』というのは『前触れなく突然に』という意味」というように、辞書の意味として覚えていくだけでは難しいものです。「ふいに思い出した」「ふいに雨がふってきた」など、さまざまな文の中で使われているのに触れることで、言葉と言葉のネットワークが作られていきます。
 書き言葉には、日常生活とは異なる言葉や言い回しがあります。本を読むことは、この言葉のネットワークを作るのにとても良い方法なのです。
 重要なのは「書き言葉」に触れることです。文章を読むのにとても時間がかかるという人は、ご家族に読んでもらったり、読み上げ機能を使ったりするのも良い方法ですよ。

 小中高生や保護者のよくある悩みと、解決へ向けた考え方を過去の相談事例などを基に紹介します。