Q 発達障害の診断を受けており、親は社会でうまく適応できるようにと、私を児童デイサービス、ピアノ、学習塾に週6日通わせます。学校でも気を使って過ごしており、毎日とても疲れます。もう何もしたくありません。家でゲームをしたり小説を読んだりして、家にこもっていたいです。
回答者 岡田智さん
(北海道大学大学院教育学研究院付属子ども発達臨床研究センター准教授)
A 毎日いろいろなことをがんばっているのですね。本当にすごいなと思います。そして、もう一ついいなと思うのは、ゲームや小説といった「好きなもの」があるということです。子どもにも大人にも、障害があってもなくても、共通して言えるのは「好きなこと」や「興味のあること」は、心の健康にとてもよい影響を与えてくれるということです。
さて、本題の「疲れる」「何もしたくない」という気持ちですが、これはあなたの心が発している大切な危機信号だと言えます。私たち人間は、幼少期から「社会に適応すること」を目指すようにしつけられています。そして、何か苦手さがある子どもたちは、それを克服するために、さまざまなことをさせられがちです。
さらに学校では、勉強、人間関係、整理整頓や自己管理、体育や運動など、人によって違いますが、自分の苦手なことに人一倍エネルギーを使わないといけない状況にあります。また、コミュニケーションが苦手な人の中には、周りになじむように、みんなと同じように振る舞い、自分の苦手さをカモフラージュする人も多いです。
これらに加えて課外の習い事が毎日のようにあるのであれば、当然のように疲れてしまいます。体力や気力のある人でも、無理な生活を長く続けていると「バーンアウト(燃え尽き)」が起き、その後、何年も精神的・身体的な不調が続いてしまうことも少なくありません。
あなたのその「もう無理」という気持ちを、率直に親や先生に相談してみてはいかがでしょうか。専門的な支援を学んでいる児童デイサービスの先生に話すのもよいかもしれません。「自分の好きなこと」を大切にしながら、無理せず学べる生活ペースをつくることが、社会への適応と心の健康、どちらにもよい影響を与えるはずです。
◇
小中高生や保護者のよくある悩みと、解決へ向けた考え方を過去の相談事例などを基に紹介します。