Q 大人は「本を読みなさい」と言うけど、漫画は大好きですが文字ばかりの本は苦手です。どうしたら楽しく本を読めるようになりますか?
回答者 秋田一臣さん(北海道子どもセンター相談員)
A 率直な質問ですね。ありがとうございます。漫画に夢中なのですね。私にもあなたと同じような少年時代がありました。手塚治虫の作品です。個性的な登場人物たちが活躍して新しい世界を切り開き、心が踊りました。また、日常生活を四コマに切り抜いた長谷川町子のサザエさんにも心をひかれました。
大人たちは漫画を否定していませんから、安心してください。読書の良さにもそろそろ気がついてほしい、特に言語で表現されている文学作品に接してほしいのです。高学年の入り口に立ったあなたの成長を願っているからなのです。
5年生までの教科書で絵の多い作品や読み物、詩などに触れてきていますね。まず絵本から始めてみませんか。大人になってから、すてきな絵本に出合えたと言っている人が少なくありません。図書館か本屋さんに並ぶ絵本の中から、自分でお気に入りを見つけることができたらいいですね。
次に詩集はどうでしょう。手のひらサイズで文字数も少なく、子どもたちの詩が掲載されている本もあります。私のおすすめは谷川俊太郎の詩集です。言葉にこだわり、人間の内面を見続けました。
そして物語です。図書館の司書さんに相談すると、おすすめの本を紹介してもらえると思います。新刊書だと短い文で内容を紹介する帯が表紙についていて、これも手がかりになります。おすすめしたい物語は『十五少年漂流記』。困難にぶつかりながらも互いに自分の力を出し合い、個人の価値と集団の意味に気付いていく道筋に、きっと共感できると思います。
読書は、読者を異なる空間と時間に引き込んでくれます。そこでの気づきがより思考を深めることにもつながります。多くの作者の言葉に触れ、自分の考えをより明確に表明する力も付いてきます。そして、多様な言葉が自分の内面に入り感受性を少しずつ形成していくと思います。
どうぞ思い切って読書の扉を開けてください。そして楽しんでみてください。
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小中高生や保護者のよくある悩みと、解決へ向けた考え方を過去の相談事例などを基に紹介します。