Q この春に大学生になり、1人暮らしをはじめました。体調が悪いわけではないのですが、朝起きることができなくなってしまい、1限の授業の欠席が続いています。帰宅後や休日も動画を見てダラダラ過ごしてしまうなど、時間を有意義に使うことができません。このままではいけないと焦っています。
回答者 光本滋さん(北海道大学大学院教育学研究院教授)
A 時間の管理ができない、苦手だという学生の声は毎年のように聞きます。自身の時間の使い方に問題があるのは、思考や感情、行動をコントロールする能力、いわゆる自己管理能力の低さだと考え、悩む人もいます。社会生活において目標を達成するためにこうした能力が問われる場面があることは事実です。
さて、今回の相談を機会に大学教員の立場から、学生が自己を管理するとはどういうことかを考えてほしいと思います。ほとんどの場合、大学の時間割や授業の課題を決めているのは教員です。スケジュールや課題に順応するだけでは、学生は主体的に考え、行動しているとは言えません。
大学は教育とともに研究をおこなう機関です。それぞれの教員は自身の意思で研究テーマを選び、研究を進めています。教員の主体性を尊重することは、外部からの介入により真理の探究が妨げられないようにするためです。これは教員のためだけでなく、教育を受ける学生にとっても大切なことです。学生には、何が真理であるかを教員の研究から学びながら思考を深め、自身にとっての課題を見いだすことが期待されています。そのために自己を管理できることが大切です。
なお、近年は「自己管理力を高める方法」といった情報がインターネットなどで容易に入手することができます。それらの中にも参考になるものはあるでしょう。また、朝起きることのできない原因には、精神疾患や自律神経失調などもあります。各大学には学生相談室や保健管理センターなど各種の学生支援の組織がありますので、気になることがあったら訪問してみましょう。
これからの大学生活を通して、それぞれの専門分野や社会の担い手となるために、主体的に学ぶ姿勢を培ってください。
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小中高生や保護者のよくある悩みと、解決へ向けた考え方を過去の相談事例などを基に紹介します。