保護者との個人面談でご家庭での様子を聞くと、児童についての認識に溝があることがあります。これはよくあることなのでしょうか、あるいは私の子ども理解が不足しているのでしょうか。

回答者 大谷和大さん(北海道大学大学院教育学研究院講師)

  子どもを巡り、学校の先生と保護者間での認識のズレはよくあることだと思います。実はこのことに関して、研究上でも多くの知見が存在しています。
 そのほとんどが海外の研究ですが、子どもたちのいろいろな側面(勉強面やメンタルヘルス、問題行動など)について先生と保護者が評定を行うと、一部の側面(物を壊すなど、見えやすい特徴)を除き、両者の回答傾向はあまり重ならないことが分かっています。
 これは、先生と親でそれぞれ、学校と家庭という異なる場面での子どもの姿を見ているから起こることです。もし、ここに他の大人、例えば学童保育の指導員の評定を加えると、親や教師とはまた違った回答が返ってくるはずです。
 子どもが見せる姿は、生活の場面で異なることがあるのです。学校で頑張っている分、家では気が抜けてしまうこともあるでしょう(もちろんその逆も)。
 わが家の小学生の長女は、家ではマイペースで時に両親を悩ませているのですが、学校では意外としっかりしているようで、授業参観や個人懇談に行くと先生から信頼を得ていることに驚かされます。
 また、問題だとされる行動や望ましい行動が、それぞれの生活の場面で異なる可能性もあります。例えば、学校ではじっと座って授業を受けることが求められますが、学童などでは強く求められるものではありません。
 子どもの認識にズレがあると戸惑うかもしれませんが、こうしたズレの裏には実は子どもをより良く理解するヒントが隠されていると考えられています。先生は子どもの家庭での様子を知ることで、その子の意外な側面や場合によっては、何か支援が必要な事項に気づくかもしれません。
 先生も保護者も、子どもの幸せを願う思いは共通しているはずなので、こうした認識のズレをきっかけにその子にとって何が最善なのか手を取り合い一緒に考えてみてはいかがでしょうか。

 小中高生や保護者のよくある悩みと、解決へ向けた考え方を過去の相談事例などを基に紹介します。