勤務先の保育園には外国籍の園児も通っていて、お母さんには、やさしい日本語や身ぶり手ぶりでお子さんの様子を伝え、園便りで渡した連絡事項の確認をしています。ただ最近、お互いの関係性ができてきたからなのか、お母さんの日本語の理解が進んだからなのか、「大丈夫ですか」と聞くと「大丈夫」。「これでいいですか」と聞いても「いいです」という返事が返ってくるようになりました。本当に大丈夫なのか、分かっているのか心配になります。こういう場合、お母さんにどのように確認したらいいのでしょうか。

回答者 望月由美子さん(北大子ども発達臨床研究センター)

  おっしゃる通り、いつも「大丈夫」という返事になってきている場合、お母さんにとっては、話を聞いていますと意思表示するための「相づち」のような使われ方をしているかもしれませんね。
 「お子さんの調子は大丈夫ですか?」「大丈夫」
 「時間が変更になりましたが大丈夫ですか?」「大丈夫」
 「この書類を提出してくださいね。大丈夫ですか?」「大丈夫」
 このような回答になる場合、本当に先生の質問に対して「大丈夫」を意味するのかは、気をつけて確認する必要があるかもしれません。
 日本語の「大丈夫」は、日本人にとっては使い勝手がよい言葉でも、文脈によってさまざまに解釈ができる「紛らわしい日本語」の一つです。「結構です」や「すみません」等もそうですが、「大丈夫」という言葉は暗黙のルール(知識や共通認識、文化など)を前提とする「ハイコンテクスト(高文脈)」な言葉といわれています。
 そのため、お母さんとのコミュニケーションでは、具体例を使ってみることも一案です。健康状態を尋ねる場合は「熱は下がりましたか」「病院に行きましたか」など。時間変更を伝える場合は「明日は17時に来てください。来られますか」など、結論だけ伝えて情報をスッキリと示すのも一手段です。
 試行錯誤の中で、どうすると伝わるかなと模索する日々が続くと思いますが、先生の寄り添う気持ちが何よりも大切です。多文化共生の道は試行錯誤の連続ですので、ぜひ続けてください。

 小中高生や保護者のよくある悩みと、解決へ向けた考え方を過去の相談事例などを基に紹介します。