Q 不思議に思うことがあります。休み時間や給食の時間も十分あるとは思わないのに掃除当番があることです。掃除が嫌なわけではないのですが、どうして掃除当番があるのか、スッキリとした説明を聞いたことがありません。小学校からやっていることなので、当たり前のようにやっているだけです。掃除当番にどんな意味があるのか教えてください。
回答者 二通諭さん(札幌大谷大学社会学部客員教授)
A 学校生活を送っていると、どうしてこんなことをしなくてはならないのかと、不思議に思うことが少なからずあるでしょう。あなたにとって「掃除当番」がそれに当たるわけですね。
私は「学力世界一の国」として知られていたフィンランドの小学校を訪れたことがあります。向こうの教師は、日本の学校では子どもたちが学校の掃除をしていることを知っていて「すばらしい」「うらやましい」と語っていました。
日本の学校で行われている掃除当番は、大きな成果を上げているという見解をもつ外国の教育専門家もいます。たとえば、大震災の後の厳しい状況においても暴行や略奪がなく、避難所などで驚異的なほど協調的で組織的な行動を取ることができているのは、日本の学校が明治以降続けている掃除当番や班別活動によるものではないかと考えられているのです。2022年のサッカーのワールドカップ・カタール大会でも、日本のサポーターによるゴミ拾いが称賛されましたが、掃除当番が組み込まれている学校教育との関連が指摘されています。
子どもたちによる校内清掃は、掃除を修行の一つとする仏教の伝統に由来するものといわれ、日本をはじめ一部の国のみで行われているものです。
掃除当番には、心身の機能を高めることや集団性を身につける機能などがあります。テレビのニュース番組で、ある少年が大リーガーの大谷翔平選手について「ゴミを拾う人間性が好き」と語っていましたが、掃除当番とは人間性を養う活動でもあるのです。
掃除当番の持つさまざまな意味について「面倒だな」「強制されるのは嫌だな」といった一人一人の気持ちも大事にしながら、学級のみんなで話し合ってみませんか。
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小中高生や保護者のよくある悩みと、解決へ向けた考え方を過去の相談事例などを基に紹介します。