Q 発達障害のことで相談しているお医者さんは「受け身的なのはしんどいよ」、学校の先生は「主体性がないと将来困るよ」と言います。パッシブ(回答者注・人に対して受け身的に接すること)ではだめでしょうか? いろんなあり方があってよいと思うんですが。
回答者 岡田智さん
(北海道大学大学院教育学研究院付属子ども発達臨床研究センター准教授)
A この疑問を持つということは周りから受け身でいることを指摘されて、嫌な思いをしたのでしょう。まるで自分がないような評価を受けたように感じたのかもしれませんね。
発達障害研究の世界では、対人関係が不器用な人たちは、おおまかに「積極的だが不器用」「受け身」「人と付き合わない」の三つのタイプに分かれるとされます。診断がない人たちでも、世の中にはこれらのタイプの人たちも結構いたりします。
研究者や心理支援の実践家はこれらのタイプのリスクについて、ある一定の知見を有しており、積極・不器用タイプは社会的な問題が生じやすく、受け身タイプはストレスや精神的疲労をためやすいといったリスクがあると論じています。なので先生たちはパッシブでいることに対して将来かぶる可能性があるリスクのことを心配しているのかもしれませんね。
しかし、あなたが受け身スタイルでいることで何か大きな不都合が生じていない限りは、それは人とつながりコミュニケーションをとろうとする、あなたの大事な「対人方略」であると言えます。その在り方が自分にとって違和感があるものでなければ、それを大切にしていきましょう。
ただ、合わせすぎて疲れすぎたり、自分の意見や気持ちが言えずモンモンとしたりしてしまうことが度々おきるならば、何かしらの工夫や対処が必要だと思います。相談できる人がいるということはとても良いことで、ご自身のそれらの試行錯誤についても相談できるということです。
また、この領域の研究の世界では有効な対人スタイルについての知見がある程度得られてはいますが、実際には意外と確実なことは言えず、その個人の状況で有効な対人スタイルは違うことが分かっています。
つまり、パッシブであることはあなた自身の個別的な状況に応じてあなたがとっている工夫(努力)であるといえ、私は尊重したいと思っています。
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小中高生や保護者のよくある悩みと、解決へ向けた考え方を過去の相談事例などを基に紹介します。