先月、外国籍の園児が入園してきたのですが、まだ園児も保護者も日本の言葉や習慣に慣れていません。保育園のルールや遠足など行事予定を説明したいのですが、保護者にも園児にも困っている表情をされてしまい、こちらも相手の言葉が分からないためどう伝えたらよいか悩んでいます。

回答者 望月由美子さん(北大子ども発達臨床研究センター)

  現在、日本では保育園に通う外国人の子どもが増えています(2022年12月時点の0~4歳の外国人数9万2694人)。国籍は日本でも外国ルーツの子どもを含むと、さらに多い状況です。先生がおっしゃるように外国人保護者に「伝えたい事をうまく伝えられない」という困りごとを抱える保育園も増えています。
 また、日本という異国で子育てをしなければならない外国人保護者も多様な悩みを抱えているようです。その困りごとの典型が「園便り」。印刷物や連絡帳にはさまざまな情報が記されていますが、母語や文化の異なる保護者にとって、漢字でビッシリ書かれた文章を読むことは時間的にも言語的にも難しいのです。
 できれば写真や絵を添えたり、読んでほしい箇所に下線を引き、漢字にはルビを振るなどの配慮も必要です。出入国在留管理庁と文化庁が作成した「やさしい日本語ガイドライン」などを参考に外国人に分かりやすい日本語表現で話すことや、大事な箇所や単語だけでも母語に訳すなどの工夫も相手にとって安心につながります。
 さらに、生活習慣の違いでうまく伝わらないこともあります。例えばお弁当。「明日はお子さんにお弁当を持たせてください」と伝えても、保護者が考えて園児に持たせたのは、中身が空っぽのお弁当箱だったという話もよくあります。日本の生活習慣に慣れていない人たちにとっては、私たちの“当たり前”がイメージし難い異文化だという一例です。
 外国から来た園児や保護者にとって保育園は日本の生活のスタートであり、サポートしてくれる窓口でもあります。園全体の支援も必要となるでしょう。ただ、異国での子育てに悩む親子にとって根気強く働きかけ、寄り添う先生のお気持ちが今一番の支えのはずです。

 質問は過去の相談事例や投稿を基に再構成しています。