中学生は理数的な学力の男女差がないという記事を読みました。ただ、高校生では男子の方が理数科目の点数が高い人が多いと感じます。先の記事では「男子ほど理数科目が好き」とも書いてありました。好きなら勉強もしたくなるし、好き嫌いは簡単に変えられないから結局、女子が理数科目を苦手なのは仕方がないのでしょうか。

回答者 上山浩次郎さん(北海道大学大学院教育学研究院講師)

  経済協力開発機構(OECD)加盟国を中心とした高1対象の学習到達度調査(PISA)という国際的調査があります。有名なので知っている人も多いかもしれません。それによれば、科学的リテラシーは2018年は男女差がありませんでしたが、12年、15年は男子のスコアが高かったです。数学的リテラシーも12年、15年、18年と男子の方がスコアが高いです。もしかしたら、先の感想は特に数学に関する上記の事実の一例かもしれません。
 ではなぜ、こうした違いが生じるのでしょう? おっしゃるように男子ほど好きだから勉強するのかもしれません。実際、小4と中2を対象としたTIMSS(数学・理科の学習到達度に関する国際的調査)の11年、15年、19年調査をみると、男子ほど理数科目が好きという傾向を確認できます。
 例えば、小4の時にすでに、男子ほど算数や理科を勉強することが好きと回答しています。中2でも同様です。高校生になったら、こうした傾向がさらに強まる可能性だって十分あるでしょう。
 でも、そもそもなんで男子ほど理数科目が好き、女子ほど嫌いといわれるのでしょう? いくつか理由があると思いますが、大学の先生の多くはこうした認識を、男女の能力など性別の違いに関する社会的文化的なステレオタイプ(多くの人に浸透した先入観や思い込み、固定観念)のせいだと考えているように思います。誤解を恐れず簡潔にいえば男女の能力や得意・不得意に関する「偏見」です。
 国・政府もこうした認識の改善を図っています。例えば近年、内閣府によって性別による無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)に関する調査研究がなされています。それに関連した普及啓発用動画などもあるようです。そうしたものをみつけるのは、僕よりも得意だと思います。まずは、そうしたものを見るのもいいかもしれませんね。

 質問は過去の相談事例や投稿を基に再構成しています。