Q 特別支援学級に通う小学校5年生の息子は、言葉を発することができない知的障害を併せ持つ自閉症です。学校ではおとなしいようですが、最近家の中のあちこちでオシッコをするようになり、「やめなさい!」と叱っても笑いながら逃げて行きます。下のきょうだいがまだ小さく、そっちにも手がかかり困っています。どうすればよいでしょう。
回答者 二通諭さん(札幌大谷大学社会学部特任教授)
A 「どうしてこんなに困らせるようなことをするのか」という疑問に対し、ヒントになる言葉があります。それは「『問題行動』の中に発達要求を見る(読み取る)」という、障害児教育の先達が半世紀も前に導き出した考えです。
この視点から、以下のような仮説を考えてみます。
学校でおとなしいというのは、半面ストレスをためているのかもしれません。お母さんは下のきょうだいへの対応に手を取られている、となれば、僕にも関心を持ってほしいという願いがあるかもしれません。家のあちこちでオシッコをするというのは「水遊び」の変化形なのかもしれません。
言葉の獲得を課題としている子どもにとって、水、砂、粘土など「変化する素材」による遊びは、発達を促進する大事な活動です。家の中でのオシッコも、木の床やカーペットを変化させます。お母さんの怒り顔も、息子さんにとっては笑えるほど楽しい「変化」になります。その行動の背景には、ストレスの発散、<もっと僕を見て>という心の働き、発達したいという要求、活動要求があると考えられます。
さて、この「困った状態」から抜け出すための提案です。家族で水を使った楽しく有用的な活動に取り組むことをお勧めします。たとえば自家用車があるならホースやバケツ、ブラシを使った洗車です。息子さんを含むお子さんたちにとっては発達要求に応えるもので、親には車がきれいになる効果もあるでしょう。
ほかにも炊事、洗濯、風呂掃除や家庭菜園の水やりなど、水を使った多様な作業があります。それらを試みてください。キーワードは「水」「家族で」「有用的な活動」「楽しく」です。息子さんの行動に、また親の気持ちにも変化が表れるといいですね。
質問は過去の相談事例や投稿を基に再構成しています。