記事もとに語り合う「カフェ」*関東学院六浦中高*社会を「自分事」に
掲載日:2025.06.30
新聞記事をもとに生徒が自由に語り合う放課後「新聞Cafe(カフェ)」が、横浜市の関東学院六浦(むつうら)中学・高校(黒畑勝男校長)の図書館で続いている。2022年から月に一度、1時間ほどのカフェを運営するのは司書教諭の九渡愛美(くどうめぐみ)さんだ。「世の中のことについて自分の体験と結びつけながら議論や対話をし、自分事として捉えることができる」と手応えを語る。

生徒が次々と自らの意見を述べ、にぎやかに話し合った新聞Cafe
生徒が主体的に社会のことに興味をもったり、自由に考えて表現したりする場が必要と考えて始めたカフェ。開催は担任教諭を通じ全校生徒に通知する。5月12日に図書室に集まったのは中学3年~高校3年の生徒9人と九渡教諭の計10人。この日は休刊日だったため、前日までの神奈川新聞や全国紙、英字紙、中高生新聞など7紙を用意した。毎回、参加者がその日の新聞を5~10分ほど読み、話し合いたい記事を提案する。
最初の話題は「『誰でも作家』同人誌に脚光」という日本経済新聞の記事。自主製作本を販売する催し「文学フリマ東京」の参加者数のグラフも付いている。「海外からのアニメファンもいてフリマの来場者が増えすぎ」「夏休み中にフリマを北海道とかで開催すれば地方創生にもなるのでは」「2024年度の同人誌の消費金額は20年度に比べて8割も増えたんだ」などの意見が交わされた。
*AIへの意見続々
続いて人工知能(AI)使用に関する記事に注目した。「多くの人の作品を学習させて自分の作品にしてはダメ」「努力して自分で考えて創作するべきだ。ちゃんと考える人が損する」という批判に対し「天性の能力で創作できる人もいる。努力してないからAIがダメというのは違うのでは」との声も上がった。
九渡教諭はここで「どれだけ作品に向き合っているかも大事だね」と指摘。これを受けて「自分の好きなことならAIに任せない」「AIについての詳しい授業が必要だ」といった意見も出た。
*主権者教育の土台

意見交換の合間に質問などをして新たな意見を引き出す九渡教諭
終了後は「いつも通り和気あいあいと意見を出し合い楽しめた」と、高校1年の結城一義さん。中学3年の今井希美さんは「AIの利用について自分とは違う意見が聞けて良かった」と振り返り、高校2年の影山結衣保(ゆうほ)さんも「生徒同士の普段の会話で話題にならないことを話せる場。興味の無いテーマにも関われて良い」と話した。教員が参加することもあり、生徒の体験談や発言から新鮮な情報や知見をもらえるといった感想も寄せられているという。
「世の中のことに自分も関わっていると認識する場。主権者教育の土台にもなる」と意義を語る九渡教諭。「発言者の意見や人格を否定せず、その考えを尊重しながら自分の意見も言える環境を大切にして続けていきたい」と考えている。(福元久幸)