公立学校図書館の新聞は小学校で2紙、中学校3紙、高校には5紙―。文部科学省が、2022年度からの学校図書館図書整備等5か年計画に盛り込んだ新聞複数紙配備の目安だ。東京都葛飾区教育委員会は「葛飾方式」を23年度に導入。小中学校や新聞販売店などの負担を減らしながら、この目安を実現させた。区教委独自の取り組みが今、全国から注目を集めている。

 葛飾方式で区教委は、区内全小中学校74校の購読希望紙を集約し、新聞社と直接契約を結ぶ=図上(葛飾区教委提供)=。学校が新聞販売店に購読を申し込む通常の方法に比べ、区教委を含む関係者の経理・事務手続きが簡略化されるなどのメリット=図下(同)=があるという。
 今年2月にオンラインで開かれた第7回NIE教育フォーラム(日本新聞協会主催)に出席した区教委事務局学務課の入山達也主査は、葛飾方式導入前の22年度まで「新聞を配備している学校は全体の6割、複数紙を配備できているのは2割でした」と説明。学校、区教委、販売店の負担を減らすため「行政ではある意味使い古された『一括契約』『一括調達』という方法を新聞購読の契約に使いたいと発案」した。区教委には新たに契約事務が発生するが、一方で1千件を超える各校の支出伝票の審査が減り、仕事量も減少したという。
 葛飾方式に関心が高まる背景には、学校図書館への新聞配備が進まない現実がある。全ての公立小中学校で複数紙配備を図る文科省は、単年度38億円(5カ年で計190億円)の地方財政措置を導入。地方交付税などで市町村の負担軽減を図っているが、必ずしも配備につながっていない。
 全国学校図書館協議会などが行った調査で、回答を寄せた665市区町村教委(23年11月20日時点)のうち、小中学校の学校図書館用の新聞購読費を予算化しているのは43・9%の292市区町村どまり。日本新聞協会も地方交付税の使い方が地方自治体に委ねられており「本来の目的に沿って予算化されず、十分に活用されていない」と指摘する。
 今年3月まで札幌市立二条小校長と北海道学校図書館協会会長を務めた佐藤正行教諭は「自宅で新聞を購読してない児童生徒が増える中、複数紙が学校図書館に配備され、まずは新聞に触れる機会となる意味は大きい」と述べ、葛飾方式の普及に期待する。一方で「学校図書館の館長である校長と司書教諭、学校司書が連携し、配備された新聞を授業や朝学習に活用するための一層の工夫が必要だ」と指摘している。(福元久幸)

学務課と新聞社が契約(一括契約方式)

導入によるメリット

 

◇学校図書館図書整備等5か年計画◇

 1993年度に始まり、2002年度からの第2次計画以降は毎年続いている。現在の第6次計画(22~26年度)では、公立小中学校などの図書館での計画的な図書の更新、新聞の複数紙配備、学校司書の配置拡充を図ることを目的に掲げている。