推し記事 DB活用し関心アップ*道内3高 メタバース合同発表*「簡単に調べられた」
掲載日:2024.03.25
新聞記事を過去にさかのぼって検索できるデータベース(DB)の活用が、教育現場で広がってきた。調べ学習の際に地域情報が充実している点や、他の情報源より信頼度が高い点などが評価されている。江別、浦河、札幌日大(北広島市)の3高校で行われた合同授業を紹介する。
3校の1、2年生を対象とした授業は昨年11月~今年2月に計8回行った。科目は江別と札幌日大が「情報」、浦河は有志生徒5人が課外活動で取り組んだ。
NTTコミュニケーションズ北海道支社と北海道新聞社が協力し、同支社は「私の推し記事交流イベント」と銘打って2月5日に開いた最後の発表会で仮想空間(メタバース)サービスを提供。道新は授業の期間中、過去記事を検索できる総合デジタル教材「どうしん まなbell(べる)」を提供した。生徒たちは地域、企業、スポーツ、SDGsの4分野に分かれ、気になる新聞記事をピックアップし、発表に向けた調べ学習を進めた。
札幌の商業施設エスタの閉館をテーマにした江別高のグループは、昨年9月1日朝刊の「閉館 惜しむ声相次ぐ」を「推し記事」に選んだ。ビックカメラ、札幌ら~めん共和国など大型テナントが、閉館後どうなったかを調べた。
浦河高が選んだ記事は、昨年2月22日朝刊の<発信 地域から>「インド人と共に生きる―馬産地の取り組み」。外国人が貴重な労働力になっている実情から「一緒に地域を盛り上げる郡部のモデルケースになる」と発表した。
札幌日大高で目を引いたのは昨年11月19日朝刊の「ヒグマ危機 襲撃増 捕獲目標へかじ」の記事を選んだグループ。道が保護政策の転換を検討しているとのニュースに対し「道民の不安をなくすにはどうすればいいか」と課題を設定。ごみを放置しないなどの対策を提示した。
生徒アンケートでは、回答した168人のうち40人が授業に「とても満足」、103人が「満足」と答えた。複数回答には「今まで関心のなかった情報にも触れられた」「過去の記事も簡単に調べられて良い」との声があった。
江別高の風上拓弥教諭(36)は「生徒はネットニュースに慣れているので、紙の記事より、まなbellの方が取っつきやすかったようだ。将来のために新聞に親しみ、活用させたいという目的は達成できた」と振り返る。札幌日大高の苫米地良介教諭(32)は「地域の話題が拾え、信ぴょう性も高い。社会問題の経緯を時系列で追えるのがいい」と指摘する。
同支社も「まなbellは情報通信技術との相性がいい。メタバースと組み合わせた活用を道内教育機関に広げていきたい」と話す。(長谷川賢、小田島玲)
◇メタバース◇
インターネット上に構築した3次元の仮想空間。超越を意味するメタに宇宙や世界を意味するバースを組み合わせた造語。アバターと呼ぶ分身を動かして空間内を移動したりアバター同士で会話したりできる。今回授業で使ったメタバースはNTTコノキュー(東京)が提供する仮想空間プラットフォーム「DOOR(ドア)」。アプリではなくブラウザでアクセスするサービス。生徒たちはパソコンやタブレット端末を操作して空間内に入り、新聞記事の切り抜きなどの発表資料が貼り付けられた掲示板の前で順番にプレゼンした。