札幌市立福移小と福移中を統合し、市内初の義務教育学校として東区で今春開校した福移学園(児童生徒数98人)。NIE実践指定校の同校では、小学校に当たる前期課程と中学校相当の後期課程の間で、切れ目のないNIEの体制作りが初年度の課題だ。さまざまな取り組みを通じて連携を模索しており、既に義務教育学校となっている富良野市立樹海学校の実践も含めて、貴重な先行事例として注目されそうだ。

毎週金曜の「朝の時間」に「まなbell」から選んだ記事を読む福移学園6年1組の児童

 「NIE活動を学園全体の活動に」と話すのは、福移小から異動した福本勇太教諭(39)。担任の6年1組では毎週金曜に10分ほどの「朝の時間」を設け新聞を活用している。
 10月6日も日直の児童が当日の朝刊から記事一つを選んで紹介する当番活動を実施した。「30年札幌五輪断念」の見出しを示しながら「早く五輪を見てみたかった」と感想を述べた。続いて児童は1人1台配布されているタブレット端末で、各自が北海道新聞の教育用記事データベース「まなbell(べる)」で気になった記事を選んで読んだ。
 日直が選んだ記事は6年生のおすすめとして図書室に張り出し、他学年にも発信。興味を持って読む4、5年生や7~9年生が見られるようになっている。

 福移小は昨年、新聞各紙が無償で一定期間提供されるNIE実践指定校となった。2年目の今年も数々の新聞が置かれたコーナーが校内にあり、児童生徒が登校後の空き時間や部活動の前など、ちょっとした時間に新聞を手に取る。
 福本教諭は4年生の授業「新聞を作ろう」や5年生の「情報産業とわたしたちのくらし」で新聞を活用。6年生社会の「わたしたちのくらしと日本国憲法」では、憲法記念日の朝刊3紙の憲法に関する記事を比較し、違いを学ばせた。
 後期課程の教員との会話で「憲法の話題は新聞によって書き方が違う。中学の授業で情報について考える良い機会になった」と教わって実践した授業だ。福本教諭は「情報共有ができ、教材研究を手伝ってもらえた」と語り、今後は「NIEの面白さや効果について教員間の交流を深めて理解を広めたい。共有する資料作りも大事」と考えている。
 同じくNIE実践指定校の富良野市立樹海学校(児童生徒数33人)は昨年度、義務教育学校となった。毎週1回の朝の時間に新聞を読み、短文を書いて発表する。西川博司教頭は「発表を通じ、根拠を持って自分の考えを述べることができるようになってきた」と成果を語る。
 この取り組みは樹海中から引き継ぎ、統合後に5年生まで拡大した。小規模校だけに、発表は5~9年の学年の枠を超えて他の学級で行うこともある。ここでも前期と後期の両課程をつなぐ取り組みを実践しており、今後について西川教頭は「パターン化してきた活動を発展させる必要がある」と話した。(福元久幸)

◇義務教育学校◇
 小中学校の区切りが無く、教育課程が9年間の学校。2016年に新設され、5月現在で道内21市町村に25校ある。福移学園は、校舎と校地を共用する併置校だった福移小と福移中を統合し、同じ校舎を使って開校。豊かな自然環境などの特色を持つ小規模特認校で、1人を除いた児童生徒97人が学区外から通う。札幌市教委は25年度から順次、定山渓、真駒内、厚別南・青葉の3地区で義務教育学校の開校を予定する。