*記事読みリポート、模擬授業も*坂井誠亮教授 社会と連動、生きた知識学べる/菊池安吉会長 全道の教員協力、地道に続けて

 北海道教育大旭川校の社会科教育専攻で、坂井誠亮(せいすけ)教授が担当する社会科教育ゼミの学生は、中学校の社会科教員を目指してNIEについても学んでいる。坂井教授は「暮らしに密着した教材としての新聞を使いこなせる教員になってほしい」と願う。同校の非常勤講師を務める北海道NIE推進協議会の菊池安吉会長も「卒業生が全道でNIEに取り組んでいる教員の仲間に加わり、活動のさらなる拡充に貢献する人材になってくれれば」と期待している。

坂井誠亮教授

坂井誠亮教授

菊池安吉会長

菊池安吉会長

 社会科教育専攻の学生は、新聞記事を読んでリポートを書いたりするほか、3年生は模擬授業の課題に取り組む。3人一組で授業内容を決めて発表し、その後に学生たちが研究討議をする。模擬授業のための情報収集には新聞やインターネットなどに加えて、北海道新聞の教育用記事データベース「まなbell(べる)」も使っている。
 また、社会科教育ゼミのNIE講座では、見出しが隠された記事を読んで、どんな見出しが付いているかを考えたり、隠された文章の一部を見出しや前後の文脈から判断する授業も受けてきた。
 「新聞は社会の窓口」と語る坂井教授は、教材としての重要性を指摘。「社会科に関する一般的な知識は教科書や資料集などの教材を読めば得られる。新聞では、実際の世の中の動きと連動した生きた知識を学ぶことができる」と話す。教員になったゼミの卒業生が実践した授業では「消費税増税に焦点を当てて、子どもたちに賛否両論の立場から新聞記事を調べさせ、その是非を議論させる取り組みが興味深かった」と一例を挙げた。
 上川管内には、旭川市立明星中の福沢秀校長が会長を務める上川・旭川NIE研究会があり、NIE活動は道内屈指の活発さだ。坂井教授も菊池会長や福沢校長らから誘われて、大学生向けのNIE教育に取り組むようになったという。
 旭川市在住の菊池会長は中等社会科教育法の授業のうち、10月からの後期に6コマを受け持つ。新聞を含めた教材の使い方や新聞コラムの縮訳などを指導。学生たちには「社会科教育ゼミの先輩を含め、NIE活動に取り組む教員が全道にいる。同僚と上手に協力し合いながら地道にNIEを続けてほしい」と話す。
 また、菊池会長は3、4人のグループで各自が新聞から気になった記事を切り抜き、記事を選んだ理由などを意見交換し模造紙に貼る「まわしよみ新聞」の有効性にも言及。「相手の意見をちゃんと聞き、自分の言いたいことを言える雰囲気の良い学級づくりにも役立つ。NIEが授業以外にも大切だという認識を多くの教員の間に広めたい」(福元久幸)

*来春教職目指す ゼミ生3人意見交換

 坂井誠亮教授の社会科教育ゼミ3年生は8人。そのうち来春に教職に就こうと考えている白川真衣さん、佐々木愛真(えま)さん、佐々木達希さんの3人に、NIEに関して語り合ってもらった。「平和教育のためにも重要」「生徒の将来の可能性を広げられるのでは」といった思いや考え方を紹介してくれた。

教壇に立つ将来の姿を見据えながらNIE活動について語り合った(左から)白川真衣さん、佐々木愛真さん、佐々木達希さん(諸橋弘平撮影)

 

 ―残念ながら新聞を読む学生は多くありませんね。

 佐々木達 大学の寮に住んでいる現在、日常的に新聞を読む習慣はありませんが、教員になったらちゃんと読みます。

 佐々木愛 私が暮らす女子寮には新聞が置いてあるので、わりと読む方だと思います。

 白川 新聞を取っている自宅からの通学なので、少なくとも見出しには毎週の半分ぐらいは目を通しています。地理と歴史、公民を教える社会科教員になることを意識し、授業に使えそうな記事かとか考えて。特にウクライナ情勢に関わる記事は、平和教育のためにも重要だと思って関心があります。

 佐々木愛 地理に関して言えば、札幌出身の私は道東やオホーツク方面のことを全然知らない。道内各地の地域面の記事に関心があります。

 佐々木達 富良野市出身の私にも富良野面はなじみがありました。教員になってNIEに取り組む際は、生徒にとって身近な地域面の記事を使うと興味を持ってもらえそうです。

 ―NIEを通じて生徒に伝えたいことは。

 佐々木愛 自分の可能性を広げられるんだよと言いたいです。政治のこととか難しいかもしれないけど、気になる記事を見つけて読み、分からないことを調べて理解する。そうすることで生徒たちが進むべき将来の道の選択肢が増えると思うからです。

 佐々木達 スマホで自分の知りたいことを調べるのと違って、新聞をめくっていると不意に興味を持つ情報に出合うこともある。その時に「なんでこうなったのだろう」と問いを立て、自分なりに解決していく姿勢が大事。いろんなことを知っておくと後になって役立つこともあり、無駄じゃないと伝えたいです。

 白川 新聞を通じて自分の暮らす社会がどう動いているかを知ることで大切なものを見つけ、社会の課題解決に向けて自らの行動を変えるきっかけにしてほしいと思います。

 ―NIEについてどのように考えていますか。

 佐々木愛 よく分からなかった記事について、調べて理解するのは自分との対話。その結果を人と話して意見交換し、もう一度自分で考える。そうすれば学びはさらに深くなっていくと思います。

 佐々木達 小学生から高校生までNIEの授業を受けた経験がありません。昨年、教育実習をやってみて授業は教科書通りに進んでいくことを実感しました。授業時間が多くない中で、NIEの時間をどう確保するのかが課題だと考えています。せっかく大学でNIEを学んできたのだから、新聞の活用方法を考えていきたいです。

 白川 いろんな記事が掲載されている新聞ですが、見出しの大小で重要度が一目で分かる一覧性は貴重だと思う。ただ、授業でNIEの時間を確保する手段としては、生徒1人に1台の情報端末が配布されている現状を踏まえて「まなbell」のような記事データベースを有効に使った方が良いと思います。

(司会・福元久幸)

道北を中心に多くの教員を送り出している道教大旭川校