友達が発達障害と診断されました。彼女はひどくショックを受け私に相談してくれました。私は、問題があれば何でも発達障害とする風潮に疑問です。レッテルを貼られれば差別を受ける可能性があり、本人も傷つくのではないでしょうか。友達のためにできることはないでしょうか。

回答者 岡田智さん
(北大大学院教育学研究院付属子ども発達臨床研究センター准教授)

  子どもたちの発達についての相談現場では、多くの保護者が「うちの子は発達障害では?」と心配して相談に来ます。その子どもたちの多くは、何かしらの苦手さを持っており、学校や社会に適応できず苦しんでいます。ただ最近はメディアで発達障害がよく取り上げられる影響か、学校などでそれなりにうまくやれているのに相談に来る親子も少なくありません。
 さて発達障害かどうかは、検査をして困難の度合いがある程度強く、かつ学校や仕事など実生活で特別な支援が必要なほど困っている(うまく順応できていない)場合に診断されます。つまり本人や周りが困っている状況でなければ診断されません。私の学生時代の恩師は、発達障害を「理解と支援が必要な個性」と呼びましたが、「支援」の観点が必要です。
 お友達がどういう苦手さがあるのか、どうしんどいのかは、相談からは分かりませんが、診断を受けたということは、何かしら苦しんでいて援助が必要な状況であったと思われます。診断を得ることで、特別な援助や治療を受けられたり、同じ苦しみを持つ人たちとの出会いが得られます。しんどかったことの原因が分かることで、本人も家族も気持ちが楽になる場合もあります。
 ただあなたが心を痛めているように、診断名が独り歩きして、その人が「みんなとは違う人」とラベリング(レッテル貼り)されてしまう心配があります。残念なことに、まだ世の中は他の人と「少し違って見える個性」に対し寛容ではありません。障害や診断が正しく理解されないと、人の権利や自尊心を侵害してしまうことにもなります。
 あなたが友達としてできることは、まさにあなたが今していることです。診断を受けた本人の混乱や不安などの気持ちを察してあげ、一緒に悩んだりすることです。周りの受け止め方で、本人の苦しみやしんどさも時間をかけて変わっていくと思います。

 質問は過去の相談事例や投稿を基に再構成しています。