Q 娘が、通う高校がメーク禁止、バイト禁止なのはおかしいと強い不満を持っています。「高校は社会に出るための練習や準備の場でもあるのに禁止はおかしい」と言うのが娘の意見です。いろいろな生徒全員に責任がある学校の立場も理解できますが、私も高校時代に同じ不満を持ったことがあり、娘の気持ちは分かります。もっと学校の校則が、生徒の将来も考えた校則になればと思うのですが。
回答者 加藤弘通さん
(北大大学院教育学研究院付属子ども発達臨床研究センター准教授)
A もっともな意見だと思います。子どもが小さい頃は、大人はより早く、スムーズに成長するように促すにもかかわらず、思春期に入ると、なぜかブレーキをかけるような関わりが増えます。例えば、これだけキャリア教育が行われているにもかかわらず、アルバイト禁止という学校も多いと思います。メークの問題も、就職した途端に、むしろメークするのがマナーのように言われるわけです。
これらについて、学校に言い分はあるでしょうし、保護者の考えもいろいろでしょう。ただこういう大人の関わり方の変化を、(大人は当然と考えても)若い人たちからみれば「理不尽」ということになります。
しかし、それによって子どもにもたらされるものもあります。それは「批判する力」と「想像力」です。ある種の息苦しさを感じた時、それまでは「自分が周囲の要求に合わせなければ」と思っていたのが、思春期にはそれを「理不尽」と批判的に捉え、大人や学校、社会の方がおかしいと考えられるようになります。
と同時に「今の社会がどんなふうに変化したらいいだろうか」と想像力を巡らすきっかけになります。そして、これは新たな世代が、社会を新たにつくり替えていくための大切な力です。
したがって、この時期、大人に求められる役割は、単に子どもの要求を認めるか否かを決めるだけではなく、子どもの想像力の伴走者になることです。例えば「じゃあ、どういう校則ならいいと思う? その方がいい学校になるかな?」―。校則の問題をきっかけに、学校や社会がどんなふうになったらよいのか、娘さんと一緒に考えてみてはいかがでしょうか。
質問は過去の相談事例や投稿を基に再構成しています。