Q 中学1年生の息子には自閉スペクトラム症を主とする発達障害があります。髪が伸び放題で、担任の先生によると、学校でもどことなくうつむきかげんで不気味な雰囲気を醸し出しているそうです。私も先生も理容店に行くように勧めているのですが実行してくれません。先生は髪を切らない理由を感覚過敏のせいではないかと、一緒に考えてくれています。息子が理容店へ行かない理由や、働きかけ方の助言をお願いします。
回答者 二通諭さん(札幌学院大学名誉教授)
A 息子さんが理容店に行かない理由、行けない理由を対話によって言葉にしていくのが良いと思います。それは息子さんにとっての不安の種を解き明かす営みです。
感覚過敏であれば、長い髪は衣服のフードのように光や視線、人間関係など外からのさまざまな刺激を遮断、緩和しており、そのため髪を切りたくないのかもしれません。また理容店で頭を触られることや、理容器具の発する音が、耐えがたいほどの刺激になっているのかもしれません。
それ以外の理由としては「成功」は良いけれど「失敗」はダメという二分法的な思考が影響している場合もあります。同じように理容店に行けない状態だったある生徒は「店でどうしますかって聞かれたとき、答えられない自分が嫌だから」と語っています。
理容師さんの問いに答えられず立ち往生する自分とは、すなわち失敗している自分であり、許すことができないというのです。髪の切り方は「前髪は眉毛が見えるように、横は耳にかからないように」といった定番のセリフで事足りますが、「床屋談議」という言葉もあるように、理容店は理容師と客の間で雑談や世間話が交わされる場です。
中学生であれば、例えば「勉強は大変なの?」「部活動は何をやってるの?」など、どんな問いかけがあるか分かりません。臨機応変に対応することが苦手な自閉スペクトラム症の一部の中学生にとって、理容店は避けたい場所の一つでしょう。
大事なのは「なるほど、そんなふうに感じているのか」と共感しながら聞き取りを重ね、本人と一緒に対応策を考えていくことです。対話を通して問題を一つずつ越えていきましょう。
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小中高生や保護者のよくある悩みと、解決へ向けた考え方を過去の相談事例などを基に紹介します。