Q 1歳2カ月の息子が、ほとんど毎日お昼ごはんの最中に眠ってしまいます。時間を早めにしても変わりません。眠ってしまったら終わりにすればよいのか、でもそれだと栄養が足りているのか気になります。
回答者 川田学さん(北大大学院教育学研究院付属子ども発達臨床研究センター教授)
A 幼い子どもが食事中にウトウトしたり、時には熟睡してしまうことは、よくあることです。眠ってしまう理由を考えてみると、生活リズムや子どもに必要な経験の面でヒントが得られることもあります。
1歳を過ぎていることを考えると、午前中のあそびとの関連があるかもしれません。息子さんが歩行をはじめているかどうかわかりませんが、慣れない歩行は集中力やバランス調整が必要なので、大人が思うよりも体力を使っているかもしれません。その場合、お昼に疲れが出てウトウトしてしまう可能性があります。
ただ、昼食の時間を早めにしても同じということなので、体力的な問題ではないかもしれません。むしろ午前中のあそびが足りていない理由も考えられます。1歳前後は環境内のさまざまな対象に興味を持って、じーっと見たり、触ってみようとすることも多くなります。
テレビや動画でタンポポが揺れている映像だけを見るのは間接経験ですが、公園で自分も風を感じながら揺れるタンポポを見て、手を伸ばして花びらの感触を感じるのは直接経験です。後者の方が情報量が多く、経験として豊かです。
また、自分が気づいたことを他の人と共有し、共感することに大きな喜びを感じる時期です。アゲハチョウに気づき、思わず指をさして親の顔を見ます。「大きなチョウチョだねぇ」「きれいだねぇ」などと声をかけてあげると、子どもなりに目の前の光景と言葉の意味を結びつけて経験します。そして、自分発信で気づいたことに、大好きな人が応答してくれる経験が、たまらなくうれしいのです。
午前中のあそびで、このような心躍る経験をすると、その気持ちの張りが昼食への意欲として現れてくることもあります。食は生活リズムと関係しますが、単に時間の早い遅いだけでなく、経験の質にも目を向けてみると子どもの姿が変わってくることも多いものです。
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小中高生や保護者のよくある悩みと、解決へ向けた考え方を過去の相談事例などを基に紹介します。