Q 私の通う学校はあいさつの指導が厳しいです。頭の下げ方の角度、声の出し方などを厳しくチェックされます。椅子に座っての礼などの一斉指導では「もっと頭を下げて」としかられることもあります。あいさつはした方が良いと、ぼんやりとは思いますが、納得のいく説明を聞いたことがありません。あいさつにどんな意味があるのですか。
回答者 二通諭さん(札幌大谷大学社会学部特任教授)
A ある書物によれば、あいさつは、動物にも見られるとのこと。あいさつを行うことによって、相手に対して敵意、害悪のないことを示し、同時に不安からくる相手の攻撃本能の発動を抑えるというのです。
人間も知らない者同士の出会いの場合、相手の素性や気持ちが分からず、不安になり警戒します。ここで「私はあなたの敵ではないよ」というサインである「あいさつ」の出番になるのです。誰しも「あいさつをした時にソッポを向かれ不安になった」という経験をもっているはずです。あいさつは相互に身の安全を守り、良好な関係を築く上で大切な習わしなのです。<あいさつをしましょう>と、何かと強調される理由もここにあります。
ただし、あいさつが苦手な人がいることや、適切に表現できない場合があることに注意する必要があります。言葉を発することや、瞬時に顔を見分けることに困難がある人もいます。心身の不調など、さまざまな事情を抱えている場合もあります。
ある学校では、先生があいさつしても無視する生徒がいたのですが、数カ月後に「混んでいる通学バスで疲れ果て、あいさつどころではなかった」と語ってくれたとのこと。その先生は、改めてあいさつだけで人を判断すべきではないと考えたそうです。
さて、あなたがきちんとした説明もなく、集団行動を強いられ、細かい動作を押しつけられることに息苦しさや疑問を感じたのは当然のことです。説明不要なほどに「当たり前」とされていたことに「ちょっと変?」「どうして?」という問いを立て、解き明かそうとするあなたは、優れた学びの態度の持ち主です。
「あいさつ」は簡単なようで深いテーマです。あいさつの意味を友達や先生と話し合ってみるといいでしょう。
質問は過去の相談事例や投稿を基に再構成しています。