最近、運動させたい、体力をつけさせたいとお考えになる保護者の方々が増えてきているようで、それを保育園で担ってほしいという思いを肌で感じます。ところが、私たち保育士は、幼児向けのスポーツの指導方法について研修する機会がほとんどありませんでした。外部指導者に頼むとお金がかかりますし、研修の時間もありません。どうしたらよいでしょうか。

回答者 崎田嘉寛さん(北海道大学大学院教育学研究院准教授)

  コロナ禍の影響もあり、幼児・児童の運動量や体力は、従前のようには回復していないようです。もとより、就学前から段階的に運動経験を積み、体力を高めていく機会は必要でしょう。
 しかし「運動=スポーツをさせなければならない」というわけではありません。生活の中にも、スポーツ以上に運動経験を育む機会がたくさんあります。これを機に、得意なことや必要なことの延長線上にある運動に目を向けてみませんか。
 例えば、私たちが子どもの頃には「雑巾がけ」があったと思います。生活の中で必要とされるものでありながら、その運動性に目を向ければ「からだを育てる運動」となるでしょう。このように考えれば、ごみ拾いや雪かきを一緒にすることも、広い意味での「からだの教育」と見なすことができそうです。
 保育士さんでしたら、おススメなのが絵本の読み聞かせをしながら、物語の中に出てくる動きを実際にやってみる運動遊びです。このような絵本は数が少なく選ぶのは難しいかもしれませんが、文字を声に出しながら体を動かすこともでき、「ことば」と「からだ」の育成が同時にできるので一石二鳥ですね。
 保護者の方にも、このような意図のある「ながら運動」を一緒にすることを提案してみてはいかがですか。歌いながら散歩をしたり、荷物を一緒に持ちながら買い物から帰ったりすることで、お子さんの「からだ」だけでなく、親子のあたたかい交流のうちに「こころ」も育まれると思います。
 運動経験や体力づくりは「スポーツ」の中にしかないと枠を狭めず、生活の中にちりばめられた運動の機会をとらえていけば、就学後に楽しくスポーツをすることにつながっていくのではないでしょうか。

 質問は過去の相談事例や投稿を基に再構成しています。