小学校教員をしています。担任しているクラスにベトナム人のA君が編入してきました。日本に来たばかりでまだ日本語がうまく話せず、クラスに溶け込むことが難しそうです。日本語の授業以外は、他の児童たちと一緒に授業を受けていますが、A君と児童たちの間で距離が感じられます。担任として何かできることはないかと悩んでいます。

回答者 望月由美子さん
(北大大学院教育学研究院付属子ども発達臨床研究センター非常勤研究員)

  いま、日本では先生と同じ悩みを抱える学校が増えてきている状況です。文部科学省によると、2021年に日本における学齢相当の外国人児童生徒数は13万3310人。日本語支援を必要とする公立学校の児童生徒数も、08年の3万3470人から18年には5万1126人となり、言葉の困難を抱える子どもたちだけでも約1・5倍です。
 慣れない国での学校生活は、ストレスや不安、うまく伝えられない言葉の壁などが要因となって、不就学の危険にもつながります。もちろん言葉の習得には時間を要しますが、その間も生徒たちの人間関係を築いていくことは大切です。
 では、どういうアプローチがよいかという質問についてですが、欧州を例に出すと「インターカルチュラル(異文化間)教育」というのがあります。国籍や文化の違いを超えて児童生徒たちが一緒に議論し、学び合い、共通体験を重ねながら、お互いの違いを経験的に理解し、尊重し、民主的・平和的に共生することを学ぶ方法です。
 具体的には、A君の出身国について共同で調べる活動なども良いでしょう。みんなで調べた内容を絵や文章にまとめてグループ発表したり、絵新聞にして保護者にも発信してみる。A君の出身国の地理や文化について好奇心も高まれば、お互いの気持ちも近づいていきますし、一緒に何かをつくるアクティビティは心の距離もグッと縮めてくれます。
 さらに、A君の母語を外国語学習で学ぶのも一つのアイデアです。見知らぬ文字と発音に触れる楽しさも、生徒たちの緊張感をほぐすきっかけとなってくれるでしょう。

 もちづき・ゆみこ 専門はイタリアの教育制度。1971年札幌市生まれ。

 質問は過去の相談事例や投稿を基に再構成しています。