今年11月に行われる予定の校内合唱コンクールの指揮者に選ばれました。クラス担任の先生に「君しかいないからやってみないか?」と推されたからです。その時は、がんばろうと思って立候補し決まりましたが、練習をしてもみんなに合わせることができなくてやめたくなっています。練習に協力してくれない人もいるからです。先生もそれほど協力してくれないので、もう指揮者をやめると言いたいのですが…。

回答者 橋本尚典さん(北海道子どもセンター研究員)

  中学校では合唱コンクールがどこの学校でも盛んですね。それはクラス全員で取り組む行事だし、結果が賞として現れるからでしょう。そして、この取組期間(練習期間)が長いので「最初はバラバラだったクラスが次第に一つになっていく」「歌が嫌いだったけど、みんなで歌い楽しくなった」などとたくさんのドラマも生まれます。ドラマは生徒たちの心の中にずっと残っていくものだと思います。
 合唱の意義は歌が好きな人や得意な人、あるいは嫌いな人、苦手な人も一緒に参加して声を合わせてつくりあげていくことにあると思います。そして、クラス全員が「みんなで歌おう」という気持ちになったら、それで目的はほとんど達成できたも同然です。ドラマの生まれる素地はそこにあります。最高賞の金賞をもらっても、そうした感動のドラマとは無縁だったら記憶に残らないはずです。
 では指揮者の役割とはなんでしょう? 考えてみてください。決して合唱を「仕切る」人でも「リード(引っ張る)する」人でもない。伴奏者や各声部のパートリーダーと一緒に合唱をつくっていく役割だと思います。
 だから、伴奏に協力してもらったり、パートリーダーに歌ったりしてもらいながら取り組んだりすると、良い成果が生まれるはずです。先生はきっと君にみんなをつなぐ役割を期待して「やってみないか?」と声をかけてくれたのでないのでしょうか。
 この際、練習の計画も方法も仲間の意見をもとに見直して、できるだけ多くの人が参加できる形に変えることをお勧めします。そして、君自身ができることは、曲を何回も聞いてその歌の曲想をつかむこと、強弱や歌い方を理解し、みんなと一緒に歌いながら指揮ができるようになることではないか、と思います。
 先生に声をかけられた君だからきっと仲間の力を引き出し、仲間とともに心に残る合唱をつくりあげることができると確信しています。

 質問は過去の相談事例や投稿を基に再構成しています。