「大切なものは何ですか?」この質問が小学生の頃から苦手だった。思い入れのあるものがあるわけでもなく、夢中になったと言えるものも全く無いわけではないが、どれも学校や人前で紹介できるほど立派なものではない。聞かれるたびに悩まされていた。
 ある日、私は友達とゲームをしていた。その時に「おまえの手の動きキモい」と言われた。コントローラーを素早く動かしていたことを「キモい」と言われて、その時は腹を立てた。
 しかし私が腹を立てたのは、それが「大切なもの」だったからではないかと後で思った。なにせ何百時間と練習し、操作を手に覚えさせ、素早く動かせるようになったのだ。はたから見れば、ただのゲーム好きな人だが、熱意ならば自信を持って「ある」と答えられる。特別大きいわけでもなく「キモい」と言われた手は、私にとって自分の長所を再確認させ、自信を持たせてくれると人前で胸を張って言える「大切なもの」だ。