昔、祖父母の家に元ノラ猫のクロがいた。名前の通り毛が黒く、肉球も黒で目は黄色だった。クロが来た時、私は中学生で、性格が暗く、ボソボソとしゃべる、そんな自分が嫌だった。でもクロの前では笑顔になれた。地元の高校に行くことになった時も、友達ができるのか不安だったが、クロと触れ合うことで私の性格が少し明るくなっていたので大丈夫だった。
 クロはよく祖父のおなかに乗っていた。祖父は大の病院嫌いなのだが、ある日自分から健康診断を受けると言い出した。理由はクロがいつもおなかの上に乗るのが気になるから、ということだった。検査すると末期の膵臓(すいぞう)がんが見つかった。祖父はその後、医者の余命宣告より1年も長く生きることができた。クロのその行動のおかげだと私は思いたい。
 クロはもういないが、私はこの二つのことから、クロに感謝している。ありがとう、クロ。