「ピアノコンクールの全国大会は諦めて」と母が言った。新型コロナウイルスがはやり始めた時は「中国の病気」と思っていた。自分の身に近づくことなど考えもしなかったが、うわさで聞いていた休校や外出自粛は本当になり、今年の3月に東京で開かれた大会に行けなくなった。
 テレビを見るたび、感染者数や死亡ニュースが流れ怖かった。不安でいっぱいな私は極力見ないようにした。そんな時、母が言った。「知らない方が怖い。しっかりと情報を知った上で、自分で考えることが大切だよ」
 新型コロナウイルスの中では何もできない、と思っていた。しかし、今できることも何かあるはずだ。ピアノも勉強も前に進めるチャンスだ。生きていれば自分ではどうすることもできない、思いもよらない事態が起こる。ここで立ち止まってはいられない。だから私は顔を上げ、前に進むことにした。