祖母が亡くなった。85歳で。ぼくが幼いころ祖母は「私は100歳まで元気に暮らしたいね」と大きな声で言っていたのをよく覚えている。ある日、ぼくと祖母と母で買い物に行った。ほしいおもちゃを見て母にねだったが「ダメ」と言われてしまった。泣きそうになっているとき祖母が「買ってあげる」と言い、買ったおもちゃを手にのせてくれた。でも素直に「ありがとう」と言えなかった。亡くなる前にお見舞いに行ったとき、祖母は認知症になっていて、ぼくのこともあまり覚えていなかった。ぼくは、あのとき「ありがとう」と言っておけばよかったと思った。
 今も忘れず、捨てず、ずっと持っている。あの日、祖母が買ってくれたおもちゃを。ぼくは祖母に「ありがとう」を言えていない。だから祖母の夢、100歳まで元気に暮らすことを恩返しとしてかなえたい。