「ぶんぶんタイム」に掲載した作文の中から、優れた作品を毎年度、半期ごとに選んで表彰する「ぶんぶん大賞」を創設しました。第1回の受賞作品は、2018年度上半期(4~9月)に掲載されたテーマ編(「私の願い」「食べる」)62編と、フリー編(題材自由)62編の中から、テーマ編は登別明日中等教育学校3年、南雲羽那(はな)さん(14)=登別市=、フリー編は釧路湖陵高校定時制3年、岡田竜太さん(27)=釧路市=に決まりました。北海道新聞社NIE推進センターが選考しました。

■テーマ編 「食べる」

生きている実感がわく

中3 南雲羽那(はな)(登別市)

 私にとって「食べる」ということは特別なことです。
 私は小5の時、潰瘍性大腸炎という難病を発症し入院しました。4カ月に及ぶ闘病生活はとても苦しかった。治療法は栄養をすべて点滴から取るものだったからです。
 病室は相部屋だったので、食事の時間はにおい、はしの音、「おいしーい」という声、食べ物の名前が聞こえてきました。とてもつらい時間で、「いつになったらご飯が食べられるのかな…」と終わりが見えず、泣くときもありました。
 そして体調が良くなり、食事ができるようになって初めて重湯を食べたときは、お米の味がこんなにもおいしいのかと感動しました。
 私にとって「食べる」ことは、生きているという実感がわくことだと思います。入院生活は元気の源を知る得難い経験になりました。

(2018年4月16日掲載)

母のレシピ受け継ぎたい*南雲さん

 4月の掲載当日、担任の先生が学級通信に載せてくれました。潰瘍性大腸炎は今の学校の先生たちも知らなかったようで反響も大きかった。今回の受賞もすごくうれしいです。
 今も食事制限はあり、脂っこいものや熟したメロンなどは自宅の食卓に載りません。父母や妹に協力してもらっています。
 持参する弁当も母の手作りですが、中でも鶏のササミが大好きです。「食べる」ことは元気の源と書きました。1人暮らしをする時には、母の料理のレシピを大事に引き継いでいくつもりです。

入院中の思い伝わる

 南雲さんは入院中、3カ月間点滴が続き、ひどくやせたと言います。それでも入院を「得難い経験になった」ととらえる前向きな性格だから、病を克服できたのでしょう。
 病室での食事の音や重湯の味などのくだりからは、さまざまな思いがしっかり伝わってきます。
 今は体力も回復し、部活の英語サークルで小学生に元気に英語を教えているとのことです。(森田一志)

■フリー編

「一期一会」にありがとう

高3 岡田竜太(釧路市)

 関東に住んでいた頃、私は駅前である男性と出会った。その人は自分で考えた言葉を書いた色紙をブルーシートの上に置いて、客の言い値で売っていた。最初「気持ち悪い」と思った。
 しかしよく見ると、良い言葉を書いている。色紙の左隅に、自分で作ったハンコで「コト」と押されていた。見た限りで売れ行きは悪そうである。人助けのつもりで一つ買おうと話しかけた時、あることに気づいた。彼には片足がないのだ。「人助け」なんて、何て自分は上からの目線で考えていたのか、と思った。
 彼と仲良くなった頃、釧路の実家に戻ることになった。別れる前にコトさんから色紙2枚をもらった。一つには「一期一会」、もう一つには私を励ます言葉と「出逢(あ)ってくれてありがとう」と書かれていた。
 元気がなくなった時、それを読み返し、また元気になる。コトさんに「ありがとう」と言いたい。

(2018年7月30日掲載)

ペンが弾むように書けた*岡田さん

 このテーマを選んだのは、今までで一番印象深くうれしかった経験だからです。作文は得意ではないのに、不思議とペンが弾むように書けました。受賞はとてもうれしく思います。
 コトさんにはその後、会っていません。色紙はいつでも見られるように部屋に張っています。色紙の全文です。
 <強く強く いつまでも 自分を信じて どこまでも 歩んで行き この先も信念を貫いて たのしいと思う毎日を すごしてのりこえていけるさ 竜太なら 出逢(あ)ってくれて ありがとう>

大切な体験、素直に表現

 大切な体験を素直に書くことで心温まる作品になりました。街で偶然出会った人と仲よくなり、別れる時に心の支えになる言葉をもらった―。人の出会いの不思議さを感じさせます。
 岡田さんは中学を卒業した後、いろいろな仕事に就きましたが、「やはり学ぶ必要がある」と今の高校に入りました。社会での多様な経験があるからこそ、コトさんの言葉が心に響いたのでしょう。(小田島玲)