ぶんぶんタイムに掲載された作文の中から、心に残った作品をもう一度紹介する「ぶんぶん大賞」。2021年度上半期(21年4~9月)は、テーマ編と題材自由のフリー編を合わせた1925編の投稿から、大賞1作品、特別賞3作品が決まった。大賞は岩見沢高等養護学校3年の白幡茄々子(ななこ)さん、特別賞は札幌白陵高3年の高橋俊介さん、空知管内妹背牛町立妹背牛中2年の関吉菜乃さん、北海道教育大学付属函館中3年の浦雪華(きよか)さんとなった。作品とともに、筆者の作文に込めた思いなどを紹介する。選考は北海道新聞社NIE推進センターが行った。

■大賞 テーマ編「ありがとう」

障害を差別しないあなた

高3 白幡茄々子(ななこ)(岩見沢市)

 障害を持った私を差別せず、そばにいてくれてありがとう。あなたと出会ってからもう十何年もたつね。同じ保育所から小学校、中学校と進み、高校は別々になったね。
 私は今でもはっきりと思い出せるよ。あなたは何回も私を助けてくれた。病気のことで他の友達に悪口を言われたのを知ったとき、とても苦しかったよ。自分の一番の弱点を突かれちゃったからさ。あの時は正直どうしたらいいのか分からなかった。でもあなたはメールでこう送ったの。「病気のことは全部私に言いなさい」「ななちゃんの病気は私が一番理解している」。あなたがそう言ってくれて本当にうれしかった。私の友達はこの人で良かったと改めて感じたよ。ありがとう。
 高校に進んでもお互い連絡できて良かった。面と向かって言うのは恥ずかしいけど、毎週土日にあなたに連絡するのがとても楽しみなの。これから先もこんな私だけどよろしくお願いします。

(2021年6月30日掲載)

語りかける文体 印象的

 語りかけるような文体が印象的です。「年を重ねるにつれて友達に手紙を書いていないなと思い、新聞を通して気持ちを伝えられたら」と投稿のきっかけを話してくれました。保育所に通っていた頃、簡単な手紙を毎日やりとりしていた2人。友達のことを考えて書こうとしたときに選んだのがこのスタイルでした。
 白幡さんの障害は末梢(まっしょう)神経の難病によるもの。病気のことでつらい経験をしたエピソード、苦しみを受けとめてくれた友達への思いを率直に表現しています。「文章を書いていると静かな雰囲気に包まれるような気がする。自分だけの時間に没頭でき、考えていることや書きたいことがどんどん出てくる」と教えてくれました。
 今も連絡を取り合っている友達は「かけがえのない存在」と言います。「先天性の障害は自分にとってパートナー。途中で投げ出さず一生付き合っていくつもりで日々生活している」と白幡さん。その姿勢を支え、励まし続けるのは、大切な友達の存在でした。(菊地由希)

■特別賞 フリー編

食品ロスない社会に

高3 高橋俊介(札幌市白石区)

 私は日本の食品ロスに関する記事を読み、思っている以上に、深刻な問題だと受け止めた。食べられるのに廃棄されている食材がもったいないと感じた。少しでも食品ロスを減らすために、命の授業を日本全国でさらに取り入れるべきではないか。
 命の授業では、動植物を自分たちの手で育てて、自分たちの手で調理をし、命をいただくことを経験させる。ただ、子どもたちが血を見ることでトラウマを持たないような対策も必要だ。その命の授業を通して、生産者の気持ちを理解し、と畜の実態を知ることができ、食品ロスを減らす可能性が期待できる。
 農林水産省が公表しているデータで、現在の日本では食べられるのに廃棄されている食品の量が、年間約600万トンだ。これを日本人1人当たりに換算すると、1日にお茶わん1杯分のご飯を廃棄していることが分かる。
 命の授業を通して、食べ残しに対しての意識を変えることができる。最終的には、食品ロスをゼロにできるような社会を私はつくっていきたいと思う。

(2021年9月8日掲載)

バイト経験 無駄気付く

 高橋さんが食品ロスについて考えるようになったのは、飲食店でのバイト経験からです。「まだ食べられるたくさんの揚げ物が、廃棄されていました」といい、その光景が忘れらないそうです。
 食材となった生物の「命」に思いをはせる教育は、一部の学校などでは取り組まれているものの、まだ広がってはいません。確かに、子どもたちには刺激が強いかもしれませんが、生産の現場を知ることは、とても重要でしょう。
 それは、大人たちも同様です。改めて、日常生活の見直しにつなげたいと思います。(杉本和弘)

■特別賞 フリー編

幼少期の母の味 再会

中2 関吉菜乃(空知管内妹背牛町)

 私と妹が保育園に通っていた頃、よくお弁当に入っていた料理があります。それは母親のオリジナル料理で、ソーセージとチーズを巻きずしにしたものです。その巻きずしは私たちの年齢が上がると、だんだんと食卓に出なくなり、私たちはその料理のことを忘れていきました。
 そして、最後にその料理を口にしてから何年もたった去年の夏休み。親は仕事があるので、朝の間に昼ご飯を作って置いていきます。そのご飯は冷凍食品だったり、手作りだったり、いろいろありますが、ある朝起きると私たちがとっくに忘れていた巻きずしが机に置いてありました。それを見て私たちは、その料理のことを思い出し、「懐かしい!」と言い合いました。
 久しぶりにその料理を食べたのは、特に目立ったことの無かった夏休みの思い出になっています。家庭のオリジナル料理は幼少期の思い出になる、頻繁に食べていた頃には思いもよらない価値のあるものだと思いました。

(2021年5月12日掲載)

日常の一こまを温かく

 日常の何げない一こまを拾い上げて、温かい作品にまとめたセンスと技量はなかなかのものです。文章が上手です。三つの段落が導入・展開・まとめとなって読みやすい。
 「食」をテーマにした作文の授業で、このことを思い出し書いたそうです。読書は好きだが作文は苦手という関吉さんですが、この時は苦労せずに書けたとのこと。「選ばれると思っていなかったので驚きました」と喜んでいます。
 関吉さんのお母さんは、作文が新聞に載った時、恥ずかしがっていたそうです。(小田島玲)

■特別賞 フリー編

魚がつなぐ祖父との絆(きずな)

中3 浦雪華(きよか)(函館市)

 魚は私と祖父の思い出だ。
 昔私は食が細く、好き嫌いも多かった。今も好きで、昔も大好きだった食べ物が一つだけある。それは魚だ。1歳で初めて魚を口にした。それは漁師である祖父が釣った魚だった。
 物心つく頃から、祖父の家へ行くと毎日焼き魚を食べていた。私は魚が大好きになった。そして祖父は私に焼き魚で箸の使い方を教えてくれた。おかげで私は箸を使うのが得意なのだろう。
 私は魚に興味を持ち、魚のおいしい部位などを教えてもらった。魚には私と祖父の思い出が詰まっている。14年がたち、今も祖父との会話では必ず魚の話が出てくる。祖父が釣る魚は店で売っている魚より何倍もおいしいと感じている。
 祖父が釣る魚は世界一おいしい。私の大好きな魚は、祖父が釣ってきてくれる魚。魚は私にとって祖父とのかけがえのない思い出なのだ。

(2021年6月30日掲載)

文章にリズム 思い凝縮

 「書くことは苦手。でも祖父について伝えたいことがいろいろあって一気に書けた」と言います。魚にまつわるたくさんの思い出が、文章に気持ちの良いリズムを与えています。「優しくて大好き」なおじいさんへの思いがあふれる内容になりました。
 「祖父が釣って、祖母が料理する魚はどれもおいしくて、一番は決められない」のだとか。コロナ禍で会う機会が減りましたが、「遊びに行った時には『今日も魚ある?』と聞くのが会話の始まり」と浦さん。思い出はこれからも増えていきそうです。(菊地由希)