ぶんぶんタイムに掲載された作文の中から、心に残った作品をもう一度紹介する「ぶんぶん大賞」。2020年度下半期(20年10月~21年3月)は、テーマ編(「ありがとう」「新聞」「新型コロナ」)と題材自由のフリー編を合わせた979編の投稿から、大賞1作品、特別賞3作品を選んだ。大賞は札幌市立月寒中3年、村上穂乃香さん(15)、特別賞は釧路市立音別中2年、田井紘花(ひろか)さん(14)、十勝管内音更町立下音更中2年、横山菜月さん(14)、滝川市立江陵中2年、矢内(やうち)凜さん(14)となった。作品とともに、筆者の作文に込めた思いなどを紹介する。選考は北海道新聞社NIE推進センターが行った。

■大賞 テーマ編「新聞」

登校が苦手 伝えたい

中3 村上穂乃香(札幌市豊平区)

 皆さんは「不登校」という言葉を聞いたら、どんなことを思いますか。私は、中学2年生の頃に学校に行けなくなり、自分の学級に行けない人が通う「別室教室」に通っています。
 この教室に通う人たちで、「別室新聞」というものを作りました。なぜかというと、「学校に行けない人たちは、不登校なのではなく、ちょっとしたことが苦手なだけ」ということをたくさんの人に伝え、一人でも多くの方に理解してもらいたいと思ったからです。
 学校に行けない人にも得意なことや、苦手なことがあります。その苦手なことの一つが「学校に行けない」というだけで、その人が「悪い」とか「特別扱い」ではないと思っています。
 この文章を読んでくれた方に、学校に行けない人のことを理解してもらえるとうれしいです。実際に、学校に行けない方が読んでくれていたら、「学校に行くのが苦手なだけなんだ」と自分に自信を持ってほしいと思います。

(2020年12月9日掲載)

不登校のイメージ変える

 「不登校」という言葉の後ろ向きなイメージが、作文を読んで変わりました。「別室教室」に通う人たちは「特別じゃない」ことを知ってほしい思いが、よく伝わってきました。誰にもある、得意なこと、苦手なことと表現したことで、読む人が自分事として考えやすくなったと思います。
 穂乃香さんの話では、小さな出来事が少しずつ積み重なり、本来の教室に行けなくなりました。友だちが心配して「何で来ないの」と声をかけてくれても、それをつらく感じる日々もあったそうです。
 いろいろ経験したからこそ、同じ悩みを持つ人に何か伝えられるのではと、原稿用紙に向かいました。文章を書くのは苦ではなかったそうですが、3回ほど書き直したと言います。
 「自分に自信を持ってほしい」。作文に込めた思いのように、昨年8月から始めた「別室新聞」の発行に積極的に携わりました。高校では、高齢者施設などを訪問する「ボランティア部に入りたい」と話す声は弾んでいました。(坂本尚之)

■特別賞 テーマ編「新型コロナ」

布マスクが奪った香り

中2 田井紘花(釧路市)

 皆さん、好きな香りはありますか。私は甘酸っぱいグレープフルーツの香りが大好きです。鼻から抜ける爽やかさや、すっきりとした感じが、とても気に入っています。あなたにもきっと、そんな香りがありますよね。
 私は、香りはとても記憶と結びつくと考えます。たばこのにおいなら伯父を、たんすのしょうのうのにおいなら祖母を思い出します。また、景色やでき事も鮮明によみがえってきます。
 ですが今はコロナ禍で、いつでもマスクを着けるようになりました。いつもなら刈りたての草や花の香りでいっぱいだった春は、布マスクの人工的な花畑の洗剤のにおいです。
 何年かあと、洗いたてでふわふわのタオルの洗剤のにおいをかいだとき、私が思い出すのはマスクの、コロナのことでしょうか。それともただ、幸せにひたっているでしょうか。
 まだ、想像がつきません。

(2020年11月25日掲載)

記憶に結びつける「感性」

 布マスクは人工的な花畑の洗剤のにおいがしたそうです。いつもの通学路の牧草のにおいは遮断されました。「香りはとても記憶と結びつく」。その言葉に10代の確かな感性を感じます。マスクは母親手作りですが、「不自由なイメージになった」と残念がります。
 コロナ禍が始まって日常生活は一変したそうです。学校給食の時、周囲とのおしゃべりは自粛。季節の祭りは中止になり、所属する吹奏楽部の出番もなくなりました。それでも「書くのは楽しい」と話す笑顔は、不安とは無縁の強さをのぞかせました。(森田一志)

■特別賞 テーマ編「ありがとう」

父の目見て伝えられた

中2 横山菜月(十勝管内音更町)

 皆さんは父の日に日ごろの感謝を伝えましたか。私はお父さんに感謝の気持ちを伝えるのが恥ずかしかったけど、しっかり伝えようと決めました。
 今、私は中学2年生で、放課後は部活や塾で帰りが遅いことがあります。お父さんとは前より話す時間が減り、休日も部活はあるし、私が疲れていて寝てしまうことが多いです。
 それでも、その日はいつもと違い、いつ伝えようかと悩んでいました。気が付けば夜になっていました。なかなか切り出せなかったけど、「いつもありがとう」と、私は目を見て伝えることができました。お父さんは驚いているようだったけど、「おう、ありがとう」と返してくれて、温かい気持ちになりました。
 たった8文字でも感謝を伝えることができるんだと思いました。相手に「ありがとう」を伝えることはすごく大事だと思います。皆さんも伝えるということを大切にして過ごしてみてください。

(2020年11月11日掲載)

切り出せぬ当日の臨場感

 悩んだときに相談するのは正直、お母さん。お父さんは何でも話すという感じではないけれど、頑張れと背中を押してくれる存在。父の日には言葉で感謝を伝えようと決めていたそうです。
 実はその日を前に、意見が合わずにけんかをしてしまい、このまま気持ちを伝えられなかったらと悩んだそう。文章からはお父さんとの距離感や当日の臨場感が伝わります。「目を見て伝える」ことの大切さも。
 「恥ずかしいから、2人きりになったときにこそっと言いました」。菜月さんは少し照れながら教えてくれました。(菊地由希)

■特別賞 フリー編

マスクに祖母の優しさ

中2 矢内凜(滝川市)

 この夏、祖母が作ったマスクが送られてきた。祖母のミシンはとても古く、重く、サビていた。それでも縫い目はきれいで、そのミシンからできているとは全く思えないほどであった。
 私と私の弟のために作ったマスク。祖母は農家で、その時期は忙しく疲れていただろう。それでも遠く離れた私たちに送ってくれた祖母の優しさと私たちへの思いがギュッとつまっているようだった。
 祖母がマスクと一緒に送ってきた野菜、トマトは太陽を吸い込んだように真っ赤で甘かった。祖母に会いたい。会ってギューってしてほしい。
 祖母が私たちにマスクをくれたように、私たちも心のこもった何かをしてあげられないだろうか。おばあちゃん、だいすき♡

(2020年12月30日掲載)

思い合う気持ち 印象的

 作文を書こうと思ったとき、真っ先に思い浮かんだのが「だいすき」なおばあちゃんのことでした。
 以前は一緒に住んでいて、離れて暮らす今も農作業を手伝いに行くとのこと。昨年はコロナ禍で収穫に行けませんでしたが、届いた野菜は一緒に植えたもの。おばあちゃんとの作業を思い出したのか「太陽を吸い込んだように真っ赤」なトマトの表現が印象的でした。
 ミシンのことを詳しく覚えているのはよく服を繕ってもらったから。手作りのマスクを通して2人がお互いを思う気持ちが伝わってきました。(菊地由希)