ぶんぶんタイムに掲載された作文の中から、心に残った作品をもう一度紹介する「ぶんぶん大賞」。2020年度上半期(20年4月~9月)は、2182編の投稿の中から、テーマ編(「気になること」「ありがとう」「新聞」「新型コロナ」)、フリー編それぞれの大賞、特別賞を選んだ。テーマ編は、大賞が小樽未来創造高2年、佐藤大海(だいな)さん(16)、特別賞は札幌市立緑丘小2年、日比野陽子さん(7)、フリー編は、大賞が札幌月寒高1年、大谷桃子さん(16)、特別賞は帯広市立帯広第二中3年、葛谷桜来(くずたにさくら)さん(15)となった。作品とともに、筆者の作文に込めた思いなどを紹介する。選考は北海道新聞社NIE推進センターが行った。

■テーマ編大賞 「ありがとう」

遠くで頑張る父 憧れです

高2 佐藤大海(後志管内積丹町)

 元気にしていますか。毎日しっかりご飯食べていますか。遠くで働いていていつも家にいないお父さんですが、今は何をしていますか。会えるときはお盆やお正月などで、最近はほとんど会っていませんね。
 小さいころは、自分が家に帰るといつもいて、夜になるとお酒を飲んですぐ寝てしまっていましたね。思い出すと懐かしくて、あの頃に戻りたいと思っています。
 野球の大会をわざわざ見に来てくれたり、何かあった時はすぐに駆けつけてくれました。家族がいない所で夜遅くまで仕事をしてつらいですよね。北海道から出る時は、災害や事故に遭わないかすごく心配です。
 そこまでして家族のために無理してお金を稼いでくれている父にすごく感謝しています。普通じゃできないことをこなす父が憧れです。
 お父さん、自分は今とても感謝していますが、これから感謝されるような大人になるため、手を抜かず頑張ります。

(2020年4月29日掲載)

感謝のまなざし 温かく

 「元気にしていますか」。冒頭から最後まで温かいまなざしにあふれる文章は一読してぐっと胸が詰まります。遠くで働く父を気にかけ「憧れです」と言い切る。筆者は否定するが、これは父へのラブレターだと思います。
 作文を書いた時、父は鹿児島県の工事現場にいました。船を持つ漁師でしたが、事故で九死に一生を得て転職し10年以上、単身で道内外を巡ってきました。常に自宅の母や姉にも気を配る家族思いの優しい性格だといいます。佐藤さんが1時間足らずで「意外にすらすら書けた」のもそんな家族の感謝の気持ちを代弁しているのでしょう。
 父は会えば「安定した仕事に就いてくれれば」と言うそうです。実は佐藤さんは父にはっきりと言ってませんが、将来は救急救命士になりたいと思っています。不在がちな父は聞いてきっと喜んでくれるはずです。(森田一志)

■テーマ編特別賞 「新型コロナ」

友だちとくっつきたい

小2 日比野陽子(札幌市中央区)

 わたしは、4月におびひろからさっぽろの小学校にてん校してきて、1週間で学校がお休みになってしまいました。1週間しかかよっていないから、ちょっとかなしいです。もうちょっと、お友だちができてからだったらいいなと思いました。
 学校がお休みのあいだ、おうちでは2さいのおとうとのおせわをしていました。おせわはたいへんです。学校のしゅくだいや、自分でべんきょうすることをきめてしていました。うんどうもしています。トランポリンをとんだり、いえの中を走ったりしていました。
 外でマスクをしていたら、いきぐるしいです。でも、お気にいりのマスクをつけているときは、ちょっぴりうれしい気もちです。
 いつもみたいな生かつにもどったら、こうえんや大きいおみせに行きたいです。学校で、もっとお友だちをふやしたいです。そして、お友だちや先生とくっついて、いっぱいお話をしたいです。

(2020年7月8日掲載)

休校の不安 見事に表現

 運動が好きな日比野さんが作文と出会ったのは1年生の時。「帯広で家庭学習のプリントに毎日ミニ作文を書くと、先生が絵を描いてくれた」と言います。うれしくて作文が好きになりました。
 転校後すぐの休校は不安だったそうです。「くっついてお話しすればお友達がもっと増えるし仲良く遊べると思った」。「くっつきたい」の一言が今の子供たちの心境を見事に表現しています。
 今も先生や友達とくっつくことはできないけれど「マスクをして近くで話せるようになった。友達もいっぱいできた」と笑顔を見せてくれました。(渡辺多美江)

■フリー編大賞

遠い 本音の「おいしい」

高1 大谷桃子(札幌市豊平区)

 私はお母さんに弟子入りを志願しようと思う。
 私の家族は両親共働きで、夜、仕事から帰ってくるのでいつも夕ご飯はおばあちゃんの家で食べています。しかしこのご時世、人と人との接触をなるべく避けなければいけないため、自分の家でご飯を食べることになりました。
 さて、だれがご飯を作るのでしょうか。お父さんお母さんは仕事、残るは私とお兄ちゃんです。私は一応女ですが、料理は本当にできません。中学校の炊事遠足と家庭科の調理実習レベルです。
 しかし私は何を思ったのかハンバーグを作ろうと思い見事に失敗しました。なんか酸っぱいデミグラスソースに崩れかけた肉、千切りでなく百切りくらいのキャベツに漢方薬のような野菜スープ。しまいには爆発でもあったのかと思わせるような台所。家族の口から放たれた「おいしい」は「本当のおいしい」ですか。
 ああ、お母さん。私を弟子にしてください。

(2020年8月26日掲載)

ユーモアの中に家族愛

 ユーモアたっぷりの夕食づくりの失敗談は、新型コロナウイルスで休校中の5月末の出来事でした。
 炊事遠足でお母さんから教わって以来のメニューに挑戦。「ハンバーグは8個のうち5個がそぼろみたいに崩れ、スープは玉ネギを炒めるのを忘れたりして。材料は教わった通りなのに、何かが違った。お母さんの味じゃなかった」と大谷さんは苦笑いです。でもお母さんは「作ってくれただけでうれしいよ」と言ってくれたそうです。
 「お母さんの料理は全部、めっちゃおいしい。手際もいいし」と幸せそうに話します。学級日誌などで、友達が書いた日常の一コマを読んだり自分で書いたりすることを楽しんでいます。「人のちょっとした変化に気づけるように努力しています。相手が喜んでくれるので」と大谷さん。そんな細やかな優しさが、家族愛あふれる作文を生み出したのでしょう。(渡辺多美江)

■フリー編特別賞

傷つく何げない言葉

中3 葛谷桜来(帯広市)

 私には葛谷桜来という名前がある。この名前は別に嫌いじゃない。でも、時に悲しくなることを言われる。「クズタニだからそのとおりクズだ」と、小学生の頃から名字でバカにされることが何度かあった。正直、どんな言葉よりもずっと傷つく言葉だった。
 葛谷という名字は母方の名字で、小さい頃母も同じようなことを言われ、相手をなぐったらしい。私は母ほど強くはない。だからいつも笑ってごまかして、傷ついてないフリをしていた。けれど、その言葉を言われた日は一日中ずっと頭の中でその言葉が響いていたりする。
 けれど、私はこの言葉のおかげで大切なことを学んだ。自分にとって何げない言葉が、他の人の心をどれだけ傷つけてしまっているのか。もしかしたら私も大切な友達を傷つけてしまったことがあるかもしれない。あなたも自分を見つめ直してみてはどうだろうか。

(2020年4月8日掲載)

言葉の持つ怖さ 伝わる

 いまは、友だちのちょっとした悪ふざけだったと思える一言も、「当時は何でも本気で捉えていたからショックでした」。小学生の頃の経験を基に書いた今回の作文は、言葉の持つ「怖さ」が伝わる内容でした。
 褒めたつもりでも、逆の意味に取られることがある。中学生からは「言葉は相手の感じ方で、どうとでも取ることができる」と、使い方を一層意識するようになったと言います。
 作文の新聞掲載を多くの人が喜んでくれたそう。「頑張っていろんな文章を書いてみたくなりました」とはにかんだ。(坂本尚之)