ぶんぶんタイムに掲載された作文の中から、心に残った作品をもう一度紹介する「ぶんぶん大賞」。2019年度上半期(4~9月)は、約1600編の投稿の中から、テーマ編(「友だち」「得意(苦手)なこと」「気になること」)、フリー編それぞれの大賞、特別賞を選んだ。テーマ編は、大賞が宗谷管内幌延町立問寒別小6年、松田夏姫(なつき)さん(12)、特別賞、釧路市立音別中2年、瀬戸有哉(あるや)さん(14)、フリー編は、大賞が稚内高2年、工藤未夢(みゆ)さん(17)、特別賞、留萌市立港南中3年、鳴海(なるみ)こころさん(15)となった。作品とともに、筆者の作文に込めた思いなどを紹介する。選考は北海道新聞社NIE推進センターが行った。

■テーマ編大賞 「友だち」

同級生はいないけれど

小6 松田夏姫(なつき)(宗谷管内幌延町)

 「一年生になったら ともだち100人できるかな」。みなさんはこの詩を知っていますか。これは有名な歌「一年生になったら」の歌詞で、まどみちおさんが書いた詩です。
 私は同級生がいません。1、2年の時は4人、今の学校に転校した3年生からは1人になりました。その後、4年間1人です。最初は悲しかったです。特に、授業でも生活でも話し合いや相談ができないからです。
 でも、今は悲しいと思うことはあまりないです。1人の良さもあります。教室は広々と使えます。あと、私に合わせて勉強が進みます。また、いろいろな経験ができます。例えば、今は児童会長をしています。学級では毎日が当番です。とても良い経験です。
 友達は100人いないけど、信頼できる上級生や下級生の友達はいます。これからもいろいろな経験をして、信頼できる友達といっしょにがんばっていきます。

(2019年6月5日掲載)

書く内容 次々浮かんだ

 4年間も同級生がいないのは珍しいかな、と思ってこのテーマにしました。1人だからできない同級生とのおしゃべりや話し合いの授業のこと、1人だから先生とじっくり取り組めた調理実習のことなど、書く内容は次々浮かびました。でも作文が長くなりすぎるので削ってしまいました。
 文章を書くのは好きです。日記も書いています。作文が新聞に載ることはびっくりしました。4年生の頃、1学年上の姉に勧められて厚い本の小説を読んだらとても面白くて、はまってしまいました。作文も読書も続けたいです。

「1人の良さ」楽しむ

 「私は同級生がいません」。大規模校を卒業した私には想像できない一文でした。寂しいのかな?と思って読み進めると、「1人の良さ」を生かした学校生活を楽しんでいる様子もしっかり伝わってきました。
 教室で会った松田さんは笑顔の絶えない女の子でした。多くのことを知りたくて新聞も読んでいるとのこと。知識を増やした松田さんの作文も読んでみたくなりました。(坂本尚之)

■テーマ編特別賞 「友だち」

男同士 何でも話せた子牛

中2 瀬戸有哉(あるや)(釧路市)

 僕のうちの仕事は酪農だ。僕は仕事をあまり手伝わないが、子牛を見るのは大好きだ。僕のお気に入りの子牛は、黒が多い模様でオスだった。同じ男同士、楽な気持ちで話しかけていた。
 ある日、大事なものが見つからず、イライラしながら子牛に話しかけた。子牛は僕を見て「べー」と鳴き、服をなめようとしていた。僕は、イライラを忘れて家へ戻った。冷静になって辺りを見回すと、捜し物が見つかった。僕にとってこの子牛は、悩みを相談したりその日の出来事を話す友達になった。
 僕は今日も牛と話す。そのつもりで学校から帰って、いつものように家に入る前に子牛のいる場所へ向かった。
 いない。今日はオス牛の移動の日だ。子牛は、遠くの育成牧場に行ってしまった。
 僕は、言葉をのみ込んだ。

(2019年8月7日掲載)

優しい人柄 思い伝わる

 「ベー」と鳴きながら服をなめようと近づく子牛。「この人懐っこさが、小学校卒業で離れた親友に似ていて、何でも話しかける『男同士』の仲になりました」。作文には子牛と仲良く接する様子が自然体で書かれており、文章から瀬戸さんの心優しい人柄や子牛への思いが伝わってきます。
 子牛とは育成牧場に行くまで数週間の付き合いでした。学校から帰っていなくなったのを知り、「大切な友を失った」と制服が汚れるのも構わず地面にひざまずき泣いたそうです。話を聞き子牛との絆の強さに感動しました。(千葉宗位)

■フリー編大賞

弟の気持ち感じた五百円

高2 工藤未夢(みゆ)(稚内市)

 私は今、看護師の資格をとるため衛生看護科のある学校に通っています。出身地には衛生看護科がないので、親元を離れ寮生活を送っています。だからか、たまに家に帰ると、父や母、祖父母などは私にすごく甘くなりました。でも、その中で唯一変わらないどころか、さらに私へのあたりが強くなった人がいます。それは弟です。離れれば少しは優しくなるかなぁ、と思っていましたが変わりませんでした。
 しかし、ある日母が来てくれた時に、DVDなどが入った紙袋をくれました。その時母から「中に入っている黄色い紙のかたまりを見て」と言われ開いてみると、中に五百円が入っていました。それは、弟が母に内緒でこっそり入れたものでした。ですが、母はそれをしっかり見ていたのです。それを聞いて、弟もなんだかんだ私のことを考えてくれていたのだと、うれしく思いました。今度家に帰ったら、少し優しく接してみようと思います。

(2019年7月31日掲載)

生意気だけどかわいい

 高校の女子寮に入って2年目です。父母と弟は枝幸町(宗谷管内)の実家に住んでいて、母は寮によく来てくれます。
 中2の弟(13)は小さいころから口答えして、「うっせー」と言うし生意気です。ふだんは全然かわいくない。去年夏ごろ、黄色いくしゃくしゃのメモ紙にきったない字で「おこづかい」と書いていて、中に五百円玉がありました。それ見て「かわいいな」と思い、割とすらすら書けました。
 今も生意気だけど9月の見学旅行の土産に携帯ケースをあげたらすぐ使ってるみたいです。

素直な情景描写 心温まる

 表情豊かで笑顔がすてきな工藤さん。中学2年から看護師を目指してきましたが、実際の寮生活ではやはり家族が恋しく「休みになると帰りたい。寮生はみんなそうです」。
 五百円玉のエピソードには、そんな家族への思いと10代の姉と弟の日常が凝縮されました。素直な情景描写に心が温まります。ささやかなことを大切に感じる力、どうぞ大事にしてください。(渡辺多美江)

■フリー編特別賞

名前 意味知り好きに

中3 鳴海(なるみ)こころ(留萌市)

 皆さんは自分の名前が嫌だな、と思ったことがあるだろうか。私は小学2年生くらいの頃、そう感じた。特にみんなの名前が漢字なのに、自分はひらがななのが嫌だった。「自分も漢字だったら」、そう思った。
 そして、もうひとつ嫌だったのが、日常でたくさん出てくる、「こころ」という文字。あたり前だけど、みんなまだ幼くて、歌詞とかに出てくると、みんないっせいに自分の方を見るのが嫌だった。今なら、「別にどうでもいいや」と流せるが、目立つのが嫌いな私は、それがとても嫌だった。
 家に帰り、母に「どうして、ひらがなで『こころ』っていう名前なの?」と聞いた。すると、母は「心の優しい子になってほしいから。そして、ひらがなの方が女の子らしいでしょ」と言った。その日初めて、自分の名前に意味があったと知った。そして、自分の名前がとても好きになれた。

(2019年4月3日掲載)

母とのやりとり ほのぼのと

 「何を題材にするか決めたら完成までそれほど苦労はなかった」と話す作文好き。嫌いだった自分の名前に込められた親の思いを知り好きになった様子が、母親とのやりとりを通してほのぼのと伝わってきます。
 今回の受賞を「母がとても喜んでくれて、『取材ではしっかり話してきなさい』と背中を押してくれました。今はひらがなの名前が大好きです」と話すときの笑顔と、真っすぐな瞳が印象的でした。「いろいろなことを経験する中で、自分の心が動くテーマが見つかればまた書きたい」と意欲的でした。(見方亜紀子)