国語の授業の主役は何も子どもだけじゃない。釧路管内浜中町内には教員が通う「教室」がある。町教委の指導室長、渥美清孝さん(49)=日本新聞協会NIEアドバイザー=はここを拠点に国語教育の種をまき続ける。教育現場を離れて2年。元教頭は「大人も子どもも国語の力を身に付けてほしい」と熱く語る。(森田一志)

感染症予防のためマスク姿で原稿用紙に向かう小中学校の若手教諭。渥美清孝さん(右端)の指導は懇切丁寧だ

感染症予防のためマスク姿で原稿用紙に向かう小中学校の若手教諭。渥美清孝さん(右端)の指導は懇切丁寧だ

 2月26日夜、浜中町総合文化センターに集まったのは小、中学校の教諭ら4人。渥美さんは北海道新聞朝刊の投稿欄「読者の声」を教材に取り上げた。2作品を比較読みして1点を選び、感想を原稿用紙1枚にまとめる。
 「読んで、どちらが面白いか、好きかなどの基準を決めて」と指示。その後、なぜ、その投稿文を選ぶ判断をしたか、根拠となる文章と、その引用理由や自分のエピソードをメモ書きする。構成順に書き進めれば、頭の考えを理詰めで整理した作文の完成だ。現役の先生らしく、わずか30分足らずで皆書き終えた。
 続いて感想文の発表があり、確かな視点や自分の体験を交えた感想を音読した。町図書室臨時司書の佐藤涼子さん(27)は「塩と新聞ほど安いものない」の見出しがついた投稿文を選んだ。半世紀以上前、父が記事を熟読し、頻繁に切り抜く姿を作者が懐かしむ内容だ。佐藤さんは新聞の書評欄を切り抜いて図書室内のポップアートに使う。なかなかはかどらない悩みを重ね選定基準を「共感」とし「自分の苦労が報われているようでうれしかった」と話した。
 この教室の正式名称は「言語力形成研究会浜中学習会」。その趣旨には「日本の教員は全員が国語(日本語)の教員です。(中略)どの教科を担当する教員も国語(日本語)を使って授業をするからです」と明記。渥美さんは「国語の力で人間力も向上させたい」とさらなる高みを目指す。
 町内の小学校教頭から町教委に異動し半年後の2018年10月に学習会を始めた。原則週1回、今年2月までに計60回を超えた。新聞以外に文学の読解や詩歌、俳句鑑賞、スピーチ指導などのほか、最近は佐藤さんの絵本の読み聞かせも定番に加わった。
 この日、参加した太田等さん(57)=根室管内別海町立上風連小校長=は渥美さんと二人三脚で学習会を支える。実は教員らが参加する学習会は10年近く前から、隔週ごとに釧路、根室の両市それぞれの勤務地であった。車で往復最大7時間かけ互いに通い続けた。太田さんは「教える先生と教わる先生が、互いに学び合うのが大事」と遠距離も意に介さない。
 学習会が継続すると、地域の住民も興味を持ち始める。釧路時代には親子が机を並べたという。浜中でも自営業者や企業幹部らが顔を出し、参加者が最多9人になる日もあった。学習会のため常に「新しい授業づくり」に腐心する渥美さんは「大変に思うこともありますが、圧倒的に楽しいんです」と目尻を下げる。